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Anthropicのダリオ・アモデイCEO、9,650億ドルの評価額の中でペンタゴンとの対立と「Mythos」公開戦略を語る

ブルームバーグ・インタビュー、2026年6月17日

Anthropicのダリオ・アモデイCEOは、同社が最も強力なサイバーセキュリティモデルの一般公開を見送った決定を擁護する一方で、AIを活用した軍事標的設定を可能にしているとの批判があるペンタゴン(米国防総省)との提携を正当化した。創業5年で時価総額が1兆ドルに迫り、時価総額と収益成長の両面でOpenAIを追い抜いたこのスタートアップを巡り、こうした明らかな矛盾が緊張を高めている。

「Mythos」の公開見送りがもたらす商業的損失

アモデイ氏は、同社の最先端サイバーセキュリティモデル「Mythos」を公開しないという決定が「商業的に甚大な損失をもたらした」ことを認めた。同氏によれば、このモデルはFirefoxだけで271件もの新たな脆弱性を発見するほど強力なエクスプロイト(脆弱性攻撃)能力を備えており、初期のエンタープライズ顧客からは「これはスーパーウェポン(超兵器)だ」として公開停止を求められたという。「銃の所持免許が必要なレベルだ」という顧客の声も複数あったとアモデイ氏は振り返る。

この決定は、同社にとって大きな経済的犠牲を伴うものだ。アモデイ氏によれば、Mythosは「Anthropic社内の研究や製品開発、次世代モデルの開発を信じられないほど加速させて」おり、公開されれば外部でも同様のことが起きたはずだという。同社は現在、より強力な安全策を講じるまでの間、サイバー防衛担当者へのアクセスを段階的に拡大している。安価なオープンソースモデルを使えば同様の能力を再現できると主張する研究者からの反発はあるものの、同社の方針は揺らいでいない。

アモデイ氏は、そうした主張を根本的に誤解を招くものとして退けた。「Mythosはコードベース全体を俯瞰して問題を見つける。Twitter上で『Mythosが見つけたコードの箇所をオープンソースモデルに指定すれば同じ問題が見つかる』と言う人がいたが、それはプロンプト(指示)のあり方として間違っている」と指摘する。同社は、まだ公表できない民間企業の脆弱性を何千件も発見しており、これまでのモデルでは到達できなかった能力を実証している。

ペンタゴンとの契約とイランでの学校攻撃

インタビューは、ClaudeがPalantirの「Maven Smart System」を通じて米軍のAI標的設定に使用されているというブルームバーグの報道をきっかけに、対立的な様相を呈した。特に、イランで2月に発生し、子供を含む150人以上が死亡した女子校への攻撃について問われると、アモデイ氏は特定の作戦でモデルがどのように使用されたかについて「我々はその情報にアクセスできない」として、詳細を把握していないことを認めた。

同氏は悲劇を認めつつも、提携の枠組みを擁護した。「戦争における過ちは非常に痛ましいものだ」と述べつつ、同社の「レッドライン(越えてはならない一線)」には違反していないと主張した。「最終的な判断を下したのは人間であり、Claudeではない」ためだ。同氏の懸念は、人間の監視なしにAIが自律的な意思決定を行うシナリオに集中しており、Anthropicの契約ではこれを明示的に禁止している。

この姿勢は、アモデイ氏の立場の複雑さを浮き彫りにしている。同氏はCaltech時代からの「長年の反戦的な立場」を自認する一方で、ペンタゴンとの仕事を国家安全保障に不可欠なものと位置づけている。「ロシアによるウクライナ侵攻や、中国による台湾侵攻のリスクを目の当たりにすると、非常に攻撃的な権威主義ブロックが再興している現状において、我々は自らを守らねばならない」と語った。

アモデイ氏は、AnthropicがICE(米移民税関捜査局)やCBP(米税関・国境警備局)とは協力しておらず、ガザ地区でも活動していないことを強調し、Palantirとの広範な関係とは対照的に、関与を慎重に限定している。大量監視や完全自律型兵器に対する同社のレッドラインは、結果としてペンタゴンがAnthropicを連邦政府との契約から除外し、サプライチェーン上のリスクと見なす事態を招いた。その後、Anthropicが拒否した契約をOpenAIが締結している。

収益成長がインフラ計画を大幅に上回る

アモデイ氏は、最近のサーバー負荷やトークン制限の背景にある、Anthropicの急激な成長ぶりを明らかにした。2026年第1四半期の収益は「前四半期比で3倍以上の成長」を記録し、年換算では約80倍の成長ペースとなる。「年換算80倍の成長など計画していなかった。そんな計画を立てるのは合理的ではない」と語った。

同社は計算リソース(コンピュート)の年率10倍の成長を想定しており、アモデイ氏はこれを妥当な数字と考えていた。しかし、実際の成長率は「局所的で極端なコンピュートの爆発」を引き起こした。このペースが続けば世界中のどの企業の収益をも上回ってしまうため、持続不可能であるという。この乖離が、GoogleやAmazonとの大規模なコンピュート契約があるにもかかわらず、短期的なキャパシティ不足を引き起こしている。

1兆ドルに迫る評価額の報道について、アモデイ氏は分析的な姿勢を崩さない。「しばらくグラフを注視していたが、『ああ、おそらくこの時期に最も収益と評価額の高いAI企業になるだろう』と予測していた。そして実際にそうなった」という。長年追ってきた滑らかな指数関数的成長が現実のものとなったことについて、トレンドラインとしては驚きはないものの、詳細な事象が実際に具現化することには驚きを感じると述べた。

エンタープライズ重視がモデルのリーダーシップを牽引

アモデイ氏は、消費者向けではなくエンタープライズ(企業)向けアプリケーションに注力するという戦略的決定について、価値観とビジネスモデルの両面からの選択だと説明した。「自身の価値観と根本的に対立するビジネスモデルを選べば、苦境に立たされることになる。価値観を裏切るか、無関係な存在になるかのどちらかだ」と語る。

消費者向けのソーシャルメディアの世界は、広告収益を目的として「エンゲージメントや依存」を促し、AI動画モデルによる「低品質なコンテンツ(slop)」を増殖させる。対照的にエンタープライズ市場は、バイオテクノロジーによる疾患の治療、エネルギーコストの低減、教育の向上、経済成長の促進といった、同社が目指す前向きなユースケースと整合している。

重要なのは、エンタープライズ企業が消費者向け製品にありがちな「ギミック(仕掛け)」よりも「長期的な信頼関係」を重視する点だ。この安全性を重視するAnthropicのミッションとの相乗効果により、商業的成功と掲げた価値観の間の対立は軽減されているが、それでも難しい選択は避けられないとアモデイ氏は認める。

この戦略は奏功している。消費者利用も「それほど努力しなくても」加速しており、「Claude Code」や「Claude Cowork」はヒット作となった。2月の「Claude Cowork」リリースは、トレーダーが「SaaSpocalypse(SaaSの黙示録)」と呼ぶ事態を招き、一夜にして従来のソフトウェア市場から2,850億ドルの時価総額を消し去った。

雇用喪失の警告が巻き起こす反発

アモデイ氏は、自身のAIによる雇用喪失の警告を「終末論的なマーケティング」と評したジェンスン・フアン氏らからの批判に強く反論した。同氏は、警告を発する際には常に、トークン課税、労働者調整のための企業連携、マクロ経済政策、タスクの自動化と職の消滅の違いなど、詳細な解決策をセットで提示してきたと強調する。

「雇用喪失のリスクとアイデアという全体像がある。アイデアをより確実なものにするため、完全には肉付けしていないが、Anthropicは多くのアイデアを出してきた」と述べた。同氏の不満は、ソーシャルメディアが長い論考の中のニュアンスを無視して「3秒のクリップ」だけを切り出す傾向にあることだ。

「これは怠慢であり、真剣な知的作業に向き合おうとしない姿勢だ」とアモデイ氏は批判する。「シリコンバレー特有の病の一種だと思う。3秒で判断するソーシャルメディアの世界に囚われている。誰かがそのような言い方をするとき、私はその人をあまり真剣に受け止めない」

同氏は、AIが今後1〜5年でホワイトカラーの初級職の約半分を代替する可能性があるという自身の見積もりを維持している。ただし、その時期や範囲には大きな不確実性があることも強調した。Anthropic社内でも、AI支援を受けても生産性が向上しないソフトウェアエンジニアが見られ始めており、そうしたケースでは「AIに作業を任せた方が効率が良い」という。

同社はエンタープライズ顧客に対し、コスト削減よりも事業拡大のためにAIを使うよう積極的に促している。「コスト削減(人員削減やリソースの圧縮)か、同じリソースでより多くのことを成し遂げるかという選択に直面したとき、我々は可能な限り後者を推し進めるようにしている」とアモデイ氏は語った。

OpenAI退社の根底にある信頼の崩壊

アモデイ氏は、自身や他の共同創業者がOpenAIを去った理由について、これまでで最も直接的なコメントを残した。「安全性については多くの正当な意見の相違があり得る。我々も彼らと意見が対立したことはあるが、社内でも私と意見が合わない者や、互いに意見が合わない者もいる」と述べた。

しかし、決定的な決裂の理由はもっと深いところにあった。「相手を信頼できないと感じたとき、相手の価値観が公言するものと異なると感じたとき、誠実ではないと感じたとき、彼らが言うような理由で活動していないと感じたとき、そして不穏な行動パターンや不誠実さを目の当たりにしたとき、その企業で働き続け、信頼し続けることは非常に困難になる」

同氏は、この分離を継続的な対立ではなく、自然な帰結として位置づけた。「ビジョンを共有できず、信頼もできない相手と議論しても意味がない。解決策は、それぞれが自分の道を行くことだ」と語る。「市場で誰が勝つか、世論の法廷で誰が勝つか、これから見ることになるだろう」

インドのAIサミットでサム・アルトマン氏との手つなぎを拒否したように見えたバイラル動画については、運営の混乱が原因だと説明した。「国家元首が集まるような国際的なサミットは非常に混乱している。直前になって立ち位置を変更し、突然全員に手をつなぐよう指示したのだ」と述べた。

中国戦略と輸出規制への支持

アモデイ氏は、法的な義務がないにもかかわらず、Anthropicが自発的に中国ユーザーへのアクセスを遮断したことを明らかにした。この決定は「数百億円規模の収益を犠牲にするものだった」という。同氏は中国へのAIチップ輸出規制を公に支持しており、これはAnthropicのチップ供給パートナーの一部と対立する立場である。

「中国がAI能力で先行することは、アメリカにとっても、世界の民主主義の状態にとっても非常に悪いことだと考えているからだ」と語る。「チップメーカーの一部は明らかに同意していないが、だからといって私が発言を止めることはない。提携を増やした今でも、同じことを言っている」

キャリア初期にBaidu(百度)で過ごした1年間がこの見解を決定づけたわけではないが、音声認識データの取得方法を議論した際に「中国ではプライバシーなど気にしない」と「不吉な」調子で言われたことは記憶に残っているという。同氏の懸念は、ウイグル族の弾圧、香港、そして「米国のビジネスネットワークに入り込み、批判を抑圧する」中国共産党の能力に向けられている。

「あれは権威主義国家であり、ハイテク権威主義国家だ。AIと組み合わさると、『1984年』やそれ以上のディストピアになり得る」とアモデイ氏は語る。同氏はAIに「民主主義を支えるテクノロジー」としての可能性を見出しているが、「逆の方向に進む可能性もある」と警告した。

自己改善するAIが開発を加速

アモデイ氏は、AIがすでに自己改善を始めていることを認めたが、それがいつ始まったかという明確な「瞬間」があるという考えは否定した。「AIが次世代AIのアーキテクチャを提案できるという点で、すでにその兆候は見られる」という。1年前、AIはモデル開発における全要素生産性を10〜15%向上させていたが、「今は20〜30%、あるいは倍増しているかもしれない」と述べた。

この加速はAnthropicの製品開発スピードにも表れており、アモデイ氏はその理由を2つ挙げた。急成長の中でも効率を維持する統一された企業文化と、「Claude自身をモデル開発や製品開発の効率化に利用していること」だ。

同氏は、再帰的な自己改善は劇的な閾値ではなく「継続的なプロセス」だと強調する。「AIが自律的に改善し、制御不能になったり危険になったりする瞬間などない。あるのは加速する指数関数的な成長であり、その都度、減速すべきか、より多くの制御を課すべきかを評価し続けなければならない」

文明的リスクと説明責任の構造

アモデイ氏は、AIによる文明崩壊の確率を約10〜25%と見積もる一方、Anthropicの行動はその確率を高めるのではなく下げていると主張する。「その確率は、テクノロジーの単純なレシピ、世界中に存在する多くの国々、経済圏の中に存在する多くの企業、そして新たに生まれる企業という状況から導き出される」と述べた。

核兵器やインターネットを引き合いに出し、AIは「民間セクターで構築され、政府が真剣な役割を果たしておらず、後手に回っている最初のテクノロジーだ」と指摘する。これを「危険で不安定な状況」と呼ぶが、同氏が望んだ状況ではない。「この技術は構築可能であり、敵対勢力も構築しており、経済的価値があるからだ」

Anthropicの「Long Term Benefit Trust(長期利益信託)」構造は、企業の権力に対するチェック機能を果たすよう設計されている。この信託は取締役会の過半数を任命・解任できる権限を持ち、「突き詰めれば、私を解任する権限さえある」とアモデイ氏は語る。「単に株式を保有するだけでなく、公的なガバナンスの要素を少し導入している」

同氏は、企業が政府を監視し、政府が企業を監視するという相互的なチェックを求めている。「企業が(AIを)独占するのは怖いし、政府が独占するのも怖い」と語る。極端な規制反対論と完全な国有化論の間で揺れ動く現状を批判し、リリース前のテストや監査の義務付けを含む「賢明で中道的な」アプローチを提唱している。

GoogleおよびAmazonとの関係

独自のAIアジェンダを持つ企業からの多額の支援を受けていながら、どうやって独立性を維持するのかという問いに対し、アモデイ氏は提携関係にありながら公に表明してきた政策上の意見の相違を挙げた。対中チップ輸出規制への支持は、その一例である。「チップメーカーの一部は同意していないだろうが、だからといって私の信念を曲げることはない」

「彼らも私がこうした発言をしないことを望んでいるだろうが、これが私の信念だ。どうしようもない」と語る。「結局のところ、彼らも我々と同じようにこの取引から利益を得ている。我々は皆大人だ。ある点では協力し、別の点では意見が合わないという関係は可能だ」

15年来の知り合いであるデミス・ハサビス氏が率いるGoogleのDeepMindとは生産的な協力関係にあるという。「Googleからコンピュートを購入し、常に安全性のアイデアを交換している」と述べた。これは「競争の果てにあるポジティブな側面」であり、生物学におけるAlphaFoldや解釈可能性研究のようなイノベーションを通じて互いに刺激し合っているという。

信頼は行動によって勝ち取るもの

莫大な利益を得る立場にある企業が構築する強力なテクノロジーを、なぜ公衆が信頼すべきなのかという根本的な問いに対し、アモデイ氏は不信感から出発するのは合理的だと認めた。「シリコンバレーは世界からの信頼を失っており、それを再構築しなければならない」と述べた。

同氏は、Mythosのリリース延期、数百億円規模の収益を犠牲にした中国アクセス遮断、Claude 2のリリース延期、ペンタゴンとの対立など、価値観に基づいたコストのかかる決定の歴史を挙げた。「我々は完璧ではなく、ミスもする。しかし、これまでの歴史を積み上げたとき、我々を最もよく説明できる仮説は何かを考えてほしい」

同氏が提示する仮説はこうだ。「我々は真剣に正しいことをしようとしている。不完全であり、組織は常に機能不全に陥り、それを修正し続けようとしている。多くのミスや失敗はあるが、根底には正しいことをするための正直で誠実な青写真があり、それを実行しようとしている」

アモデイ氏は自身をオッペンハイマーに例えることを否定し、核連鎖反応を最初に構想したレオ・シラードに共感を覚えると語った。「私の考えでは、すべての中央に立とうとするようなカリスマ的な人物によってこの状況を乗り越えることはできない」と語る。「ここには権力の均衡が必要だ。ある意味で、私はオッペンハイマーを失敗のケース、つまり起こってはならないこととして見ている」

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