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Bank of Americaテクノロジー・カンファレンス:ADIのCFOが語るデータセンターの次なる好機「垂直電源」と自動車事業の急回復

Bank of America 2026 Global Technology Conference、2026年6月2日 — アナログ・デバイセズ(ADI)CFO リチャード・プッチオ氏

アナログ・デバイセズ(ADI)のCFO、リチャード・プッチオ氏は、Bank of America主催の「2026 Global Technology Conference」において、投資家が十分に織り込めていなかった2つの重要なメッセージを提示した。一つは、データセンター内部の「垂直電源アーキテクチャ」がADIにとって過小評価されている巨大なTAM(獲得可能な最大市場規模)拡大の好機であること。もう一つは、自動車事業が市場の予想を上回るスピードと広がりで回復しており、その波は中国のみならず欧州や日本にも及んでいるという点だ。これらはいずれも、年初時点では広く予測されていなかった展開である。

垂直電源:ウォール街が過小評価するデータセンターの成長領域

プッチオ氏の講演で最も先見性に富んでいたのは、AIインフラ内における「垂直電源供給」へのシフトに関する議論だ。同氏はこれを、同社の既存の主力である光学事業を上回る成長機会と位置づけている。ADIのデータセンター向け売上高は現在、光学インターコネクトとパワー(電源)がほぼ半分ずつを占め、残りをATE(自動試験装置)が構成している。ATEについては、主要なプラットフォームプロバイダーと歩調を合わせて成長していることを同氏は認めた。しかし、同氏が非対称的なアップサイド(上振れ余地)を見込んでいるのは、この垂直電源分野である。

ここで鍵となる技術が、統合電圧レギュレータ(IVR)だ。プッチオ氏はその利点を「消費電力を10%〜15%削減し、基板上の占有面積を縮小する。従来の垂直電源に存在した付随的な構造を排除し、極めて効率的な構造を実現する」と明快に説明した。ラックの電力密度が1ギガワット、さらにはそれ以上へと向かう中で、この「最後の一ミリ」の効率改善は不可欠なものとなる。ADIによるEmpower Semiconductorの買収はこの戦略の要であり、プッチオ氏はその狙いについて「今後、電力供給において極めて重要になると確信している技術のロードマップを大幅に加速させるためのものだ」と率直に語った。

プッチオ氏は、6〜9カ月前までは垂直電源は単なるコンセプトや一つの設計採用に過ぎなかったと認める。しかし現在では「データセンターチームが議論する中で、垂直電源がインフラ構築の鍵を握るという認識が強まっている」と述べた。戦略的論理はシンプルだ。製品の初期段階で採用を勝ち取れば、その後の世代交代においてもロードマップの議論に不可欠なパートナーとなれる。ハイパースケーラーによる設備投資のペースを考えれば、早期にこの設計サイクルに組み込まれることは、個別の製品採用以上の価値を持つ。

自動車:コンテンツ増で底打ち、台数とは無縁の成長

プッチオ氏は、自動車事業はADIにとって静かな一年になるという市場のコンセンサスに反論した。第2四半期会計期間の最終月に見られた受注の加速は、タイミングの面で予期せぬものであり、かつ在庫積み増しによるものではなく、実質的な「コンテンツ(搭載額)の増加」に裏打ちされた本物であると強調した。「これは先行購入ではない。コンテンツが増加し、明確な需要が押し上げていることを確認している」と述べた。

ADIの自動車向け売上高の30%を占める中国市場は依然として最大であり、ADAS(先進運転支援システム)の普及はまだ成熟には程遠い。プッチオ氏によれば、中国におけるレベル2 ADASの普及率は現在約10%で、中国のOEMはこれを20%〜30%へと引き上げる目標を掲げている。普及率が1ポイント上昇するごとに、車両あたりのADI製品搭載額が直接的に増加する仕組みだ。さらに、直近の四半期では欧州と日本でも過去最高の自動車向け売上を記録しており、中国一極集中ではない地理的な広がりを見せている。

特筆すべきは、バッテリー管理システム(BMS)が2年ぶりに前年比プラス成長に転じたことだ。BMSはADIのEVポートフォリオの中で最もコンテンツ量が多く、先行指標として機能する。プッチオ氏は自動車の販売台数については「どの予測を見ても2024年水準に近い低迷が続くだろう」と慎重だが、販売台数のサイクルが同社の業績見通しには本質的に無関係であると明言した。過去5年間、ADIの自動車向け売上高は、自動車市場全体の販売台数トレンド(SAAR)を15ポイントも上回る成長を遂げており、これは完全にコンテンツの増加とシェア拡大によるものだ。

産業機器:成長の余地あり、チャネル在庫は適正

産業機器向けはADIの売上の50%を占めており、需要の質を測る上で最も重要な指標だ。プッチオ氏は、二重発注への懸念を真っ向から否定した。チャネル在庫は6〜7週間分と、歴史的な標準よりも低水準にある。さらに重要な点は、産業セグメントの60%は依然として過去のピーク売上高を約20%下回っており、在庫リスクを示唆する「需要と消費のクロスライン」に達するまでには、構造的な回復の余地が十分に残されていることだ。

残る40%(航空宇宙、防衛、エネルギーインフラ)については、需要が急速に拡大しているため、先回りして在庫を積み増す動機がなく、現在の需要に基づいた直接的な発注が行われている。AIデータセンターの構築に伴うインフラ需要の波及効果は、電力・電気インフラを構築する産業機器顧客にも及んでおり、プッチオ氏はこれを「嬉しいアップサイドの一つ」と表現した。

価格戦略:便乗値上げではなく、コスト回収

ADIは2026年に初の広範な価格改定を実施したが、プッチオ氏はこれを日和見的な値上げではなく、利益率を維持するための「コスト回収」であると強調した。「利益率を向上させるための戦略ではない。インフレ、特にバックエンド製造で使用される金や石油由来材料の価格高騰を考慮し、利益率を維持しようとしているだけだ」と説明した。供給不足による値上げではないことも確認しており、リードタイムは大部分の製品で標準範囲内に収まっており、一部の需要の高いSKUでわずかな延長が見られる程度だ。

今後の価格戦略について、プッチオ氏は投入コストの推移に連動したダイナミックなものになるとし、中東の物流リスクが不確定要素であると指摘した。同氏によれば、ADIにとってより戦略的に重要なのは一律のリスト価格改定ではなく、設計段階で付加価値を認めてもらう「イノベーション・プレミアム」であり、これがASP(平均販売単価)の優位性を高める持続可能な源泉となっている。ADIの比較的新しい製品(発売から10年未満)のASPは、旧製品ポートフォリオの約2倍に達し、同社の混合ASPは業界平均の約4倍で推移している。

売上総利益率と資本配分

アナログ半導体業界で最高水準の72.5%という売上総利益率に対し、投資家はこれ以上の拡大余地があるのかを注視している。プッチオ氏は、稼働率の向上による利益改善はほぼ一巡したと正直に認めた。今後は、製品ミックスの変化(産業機器向け売上の比率が現在の50%から、過去のピーク時の53〜54%へ戻ること)と、売上成長に伴うオペレーティング・レバレッジが利益拡大の鍵となる。同氏は、急激な変化ではないものの、着実な利益率の積み上げを予想している。

資本配分に関して、プッチオ氏は大規模なM&Aについては規制当局の集中排除の観点から構造的に困難であると否定した。当面の優先事項は、過去の買収による10億ドルの売上シナジーを2027年までに達成することであり、2025年には数億ドルが実現済みで、2026年にはさらなる貢献を見込んでいる。ソフトウェア、デジタル機能、AIツール分野での小規模な買収(タックイン買収)は検討対象であり、Empowerの例のように、社内の既存ロードマップを技術的に加速させる戦略的な案件に絞る方針だ。

供給能力と需要の質

ADIは2022年から本格化した社内の供給能力倍増計画を2026年度末までに完了させる。設備投資は売上高の4%〜6%の範囲で推移する見通しで、現在の市場予想に基づけば年間約7億ドル規模となる。これは新規の工場建設ではなく、ツールの近代化と段階的な能力増強に向けられる。ファウンドリーとの関係は機能しているが、プッチオ氏はアナログ半導体のサプライチェーンが全体的に逼迫する中、外部の追加能力確保にはコストがかさむようになると警告した。

需要の可視性について、プッチオ氏は顧客が歴史的な標準よりも1四半期先まで発注を行うようになっていると指摘した。これは供給環境の逼迫に伴う行動変容である。ADIは、既存の統計的な受注追跡に加え、AIベースの予測ツールを導入することでシグナルの精度向上を図っている。リードタイムの安定は業務上望ましいものの、顧客の早期発注の緊急性を低下させ、予測の死角を生む可能性があるため、同社はこの課題の解決に積極的に取り組んでいる。

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