HPE、AIネイティブ・ネットワーキングを「エージェント型エンタープライズ」の基盤に位置付け Juniper統合後のクロスプラットフォーム革新を加速
HPE Discover 2026 インベスター・リレーションズ・サミット(2026年6月16日)
Hewlett Packard Enterprise(HPE)は、主力カンファレンス「Discover」において、Juniper Networksの統合を迅速に進めていることを強調し、同社のネットワーキング・ポートフォリオを、到来しつつある「エージェント型AI(Agentic AI)」時代の不可欠なインフラストラクチャ層として位置付けた。CEOのアントニオ・ネリ氏とネットワーキング部門責任者のラミ・ラヒム氏は、Juniperの買収完了からわずか5カ月で製品間の相乗効果を実現し、キャンパス、ブランチ、データセンター、ルーティング、セキュリティの各領域にわたる「自律型ネットワーク(Self-driving networks)」を確立した経緯を説明した。
同社は6四半期先までの業績ガイダンスを提示し、2027年度の売上高見通しとして中間値で8~12%の成長を掲げた。これは、堅調なネットワーキング需要と、現在の受注残高の数倍に相当するパイプラインに裏打ちされたものだ。この自信は、Juniper買収に伴うポートフォリオの構造的変化と、顧客のコミットメントを長期的に可視化できる供給制約の継続に起因している。
統合スピードは予想を上回り、収益シナジーが顕在化
ネリ氏はJuniper統合の驚異的なスピードを強調した。7月2日の買収完了からわずか5カ月で、1万人のJuniper従業員をHPEに迎え入れ、営業組織を統合し、完全なネットワーキング戦略とロードマップを発表し、新製品を出荷した。「1月2日までのちょうど5カ月間で、1万人のJuniper従業員を社内に統合しました。ネットワーキング戦略と、キャンパス・ブランチ、データセンター・スイッチ、セキュリティ、ルーティングという4つの主要セグメントにわたるロードマップを発表し、営業部隊を一つの組織に統合しました」と、ネリ氏は投資家向けセッションで述べた。
統合はすでに具体的なクロスプラットフォームの革新を生んでいる。HPEは、従来Aruba Central管理ソフトウェアでのみ動作していたAruba CXスイッチング・ポートフォリオが、Mistによって「Day 0」「Day 1」「Day 2」の運用をサポートされるようになると発表した。製品リーダーのスナリニ・サンカヴァラム氏はライブデモを行い、管理者がQRコードをスキャンするだけでCXスイッチをMistにオンボードし、テンプレートを通じて設定を管理し、Marvis AIを活用して、プロアクティブな問題検知や、人手を介さずにスタックしたポートを自動修復する「セルフヒーリング」などの自律的なトラブルシューティングが可能になる様子を披露した。
同社はまた、MistとAruba Centralの両方で動作する初のデュアルプラットフォーム・ハードウェアとして「723Hアクセスポイント」を投入し、すでに一般提供を開始している。さらに重要な点として、Juniperの価値提案の中核であったAI主導の自律運用機能「Marvis Actions」が、HPE Aruba Centralにも導入される。これにより、マイクロサービス・アーキテクチャ上に構築された共通の「エージェント型AIフレームワーク」を通じて、Centralユーザーにエクスペリエンス重視のAIと自動化された修復機能が提供されることになる。
今後の展望についてネリ氏は、統合による収益シナジーは2027年度から本格化し、プライベートクラウドやAIファクトリーの提供においてネットワーキング、コンピュート、ストレージ、ソフトウェアの連携を強化するにつれて、その後の数年間で加速すると示唆した。「特にクラウド・ポートフォリオとのシナジー効果は、仮想化スタックのソフトウェアであれ、プライベートクラウド・スタックであれ、あるいはストレージであれ、2027年度、28年度、29年度の収益と利益の源泉となります」とネリ氏は説明した。
全領域に広がる自律型ネットワークの機能
同社は、自律型ネットワークのビジョンを未来の理想ではなく、実用的な必要性として位置付けている。AI規模のインフラを人手で運用することは事実上不可能であるためだ。ラヒム氏は、自律型ネットワークはリアルタイムで検知、学習、最適化、保護、修復を行う必要があり、ITチームを「インフラの手動運用」から「ビジネス成果の加速」へとシフトさせるものだと説いた。
キャンパスおよびブランチ環境において、HPEはエージェント型AIフレームワークが複数の基盤的柱を通じてどのように自律運用を実現するかを実証した。第一に、システムは毎分すべてのユーザーから得られるリアルタイムの体験データを活用し、実際のカスタマーサポート事例と照合し、デジタルツインで補強することでAIインサイトの有効性を最大化する。第二に、APIファーストのアプローチにより、すべてのデータをAPI経由で利用可能にし、強力なモデル・コンテキスト・プロトコル・サーバーとツールを構築することで、大規模なエージェント自動化を実現する。第三に、包括的なAIエージェントとスキルセットがデータを分析し、Marvis Minisデジタルツインからパケットキャプチャ、ログ、ナレッジベース記事、セキュリティ脆弱性に至るまで推論を適用する。第四に、大規模な体験モデルがビデオ通話品質の低下などの根本原因を特定し、将来の問題を予測して未然に防ぐ。
サンカヴァラム氏は、オフィスビル内でユーザーの6%以上がサービス品質低下を経験していた状況で、Marvisがそれを検知した自律的な容量最適化のシナリオを実演した。システムは自動的にデュアルバンド5GHz運用を有効化し、フリートの利用率を90%から54%に削減、人手を介さず、ヘルプデスクへのチケット発行もなしに問題を解決した。「これは手動のチューニングではなく、試行錯誤でもありません。ネットワークが自ら最適化し、最高のユーザー体験を提供したのです。これはHPE Mistで今すぐ利用可能です」と同氏は述べた。
同社は、有線および無線LANの両分野で20年連続でGartnerマジック・クアドラントのリーダーとして評価され、実行力とビジョンの両面で最高位に位置付けられた。顧客事例として、オハイオ州立大学がスタジアムに2,000台以上の無線アクセスポイントを導入した事例や、ミラノ・コルティナ冬季五輪でHPE Mistが数百マイルにわたる15の会場でネットワークをリアルタイムに適応させた事例が紹介された。
AIデータセンターのボトルネックを解消するルーティング・ポートフォリオ
HPEは、ルーティングを基盤インフラと位置付け、単一のアーキテクチャとして設計された専用シリコン、システム、ソフトウェアを通じて差別化を維持している。ルーティング・ポートフォリオは、エンタープライズおよびメトロアクセス向けの「ACXルーター」、業界をリードする密度と電力効率を誇る「PTXルーター」、過酷なエッジ環境での柔軟性を重視した「MXルーター」で構成される。
特にAIデータセンター向けには、AMD Heliosアーキテクチャ専用に設計された業界初のHPE Juniperネットワーキング・スケールアップ・スイッチ「QFX5250」を投入した。このスイッチは1ラックあたり72個のGPUを接続し、標準ベースのイーサネット、SONiC OSサポート、JuniperのAI自動化のオープン性を維持しつつ、毎秒260テラバイトの集約スケールアップ帯域幅を提供する。ネリ氏は、ハイパースケール環境ではネットワーク性能がモデルの学習期間を90日から30日に短縮できるかどうかの分かれ目になるため、スケールアウト・ネットワークが極めて重要だと強調した。
同社は、世界最高性能の100%直接液冷式ウルトラ・イーサネット・トランスポート定格スイッチとしてQFX5250を発表し、本日より出荷を開始した。このスイッチは、低遅延の輻輳制御と運用上のシンプルさを通じて、何十万ものGPUを巨大なAIクラスターで連携させるために必要な性能を実現する。複数のデータセンターにまたがる分散型AI展開向けには、AIファブリック用に設計された超高密度ルーティングを備えた「PTX12000」シリーズを投入。1.6テラビットへの対応準備を整えた800ギガビット・ルーティングとコヒーレント光伝送により、性能を損なうことなくサイト間を接続する。
さらに、分散型AI展開向けに設計された推論用スイッチ「QFX5140」も発表。1ラックユニットのフォームファクタで最大毎秒16テラバイトのスイッチング容量を実現し、AI推論機能をエッジ拠点に近づけることで応答時間を高速化する。データセンター担当製品リーダーのカイル・バクスター氏は、HPEが800ギガビット接続を出荷した初のOEMベンダーであり、Tomahawk 6チップセットを採用した100%液冷設計により、1.6テラビット接続でも市場で最も早く実現したと指摘した。
AI運用の面では、製品リーダーのカトリーナ・ピケット氏が、Marvisがルーターをデジタルツインに変え、合成アプリケーション・トラフィックを生成することで、現場への出張やユーザーへの影響なしにリアルタイムで劣化を検知する様子を実演した。大規模な医療アプリケーションのローンチ前に遅延が80ミリ秒から200ミリ秒以上に増加したシナリオにおいて、Marvisはネットワークを分析し、設定変更によって優先ルートが削除されたためにトラフィックが最適でないパスにシフトしたことを特定。平易な英語で問題を検証・修正するための具体的な手順を推奨した。システムは将来的に修正を自動適用する提案まで行い、完全自律運用へと近づいている。
ゼロトラスト・アーキテクチャによるセキュリティとネットワーキングの融合
HPEは、セキュリティをネットワーキングとは別の領域としてではなく、根本的に融合したものとして位置付けている。マルウェアはネットワークを利用して損害を与えるため、効果的なセキュリティ戦略には、同じネットワークを活用してポリシーを検知・強制する必要があるという考え方だ。同社は、ゼロトラスト実装を成功させるための5つの核心要素として、接続されたすべてのユーザーとモノの可視化、ポリシー主導のオーケストレーション、遍在的なポリシー強制、リアルタイム検知、AI主導の自動応答を挙げた。
セキュリティ・ポートフォリオには、業界トップクラスの効率と性能を備えたファイアウォール、包括的なアクセス制御とデバイスタイプ間での一貫した強制を行うネットワークアクセス制御、エージェントの有無を問わず幅広いアプリケーションセットをインテリジェントなルーティングでサポートするセキュア・サービス・エッジ(SSE)、あらゆる環境向けに最適化されたアプリケーション性能とセキュリティを統合したSD-WANが含まれる。SASEおよびセキュリティ担当製品リーダーのマダニ・アジャリ氏は、EdgeConnect SD-WANとSSEを1つのコンソールに統合し、一貫したゼロトラスト・ポリシーとAI主導の運用を実現する「統合SASEオーケストレーター」を発表した。
ライブデモにおいてアジャリ氏は、管理者が統合オーケストレーターからWebフィルタリング・ポリシーを作成し、それがSD-WANファブリックとZTNAユーザー全体に自動配布される様子を披露した。さらに重要な点として、すべてのSRXファイアウォール全体の脅威を分析し、HPE Threat Labsからの脅威インテリジェンスを抽出して、脅威の種類、標的となる業界、影響を受ける国に関する具体的なインサイトと実用的な推奨事項を提供する「Security Director Copilot」によるAI対応ファイアウォール機能を実演した。システムは、ChatGPTやClaudeなどの未承認AIアプリをブロックしつつ、Geminiのような容認されたアプリについては、企業ファイルや制限されたキーワードを含むプロンプトのアップロードを防ぐ特定のガードレールを適用するなど、AIアプリケーションの使用を安全に管理するためのきめ細かなリアルタイム制御を強制できる。
同社は、1ラックユニットで毎秒最大1.4テラバイトのセキュリティ性能を発揮する、最も高速な量子耐性ファイアウォールの一つとして「SRX4700」を投入した。これにより、顧客は性能のボトルネックを生じさせることなく、AIワークロードをサポートする最新のデータセンターを保護できる。また、SASEポートフォリオとZertoのサイバーレジリエンス統合も発表し、エージェントが本番環境でミスを犯した場合に迅速にクリーンな状態へロールバックできるようにすることで、ダウンタイムを削減しビジネス運用を保護する。
エージェント型エンタープライズの要件に応えるプライベートクラウドAI
ネリ氏は、AIが単なるコンテンツ生成から、データ、アプリケーション、モデル、ワークフロー全体で推論を行い、意思決定を支援し、プロセスを自動化し、ユーザーに代わって行動する「エージェント」へと進化している現状を概説した。同氏はこれを、かつてない規模で管理しなければならない「エージェント労働力のシャドーコスト」の発生と捉えており、IT部門は間もなくすべての企業機能にわたって活動する何千ものエージェントを管理する責任を負うことになる。「エージェント型AIは、新しい一連の企業要件を求めています。エージェントはセキュアで、何ができるか、どのシステムに作用できるか、そして最も重要なことに、どのデータにアクセスできるかについて明確なガードレールで管理される必要があります。また、エージェントは信頼できる企業データで学習させる必要があります。なぜなら、エージェントの能力は背後にあるデータとコンテキストに依存するからです。そして、コストを暴走させることなく需要の増加に合わせて拡張できるインフラが必要です」とネリ氏は述べた。
HPEは、エージェントワークロード専用に設計された機能で「プライベートクラウドAI」を強化した。まず、あらゆるフレームワークで構築されたエージェントを登録し、コード変更なしでAPI呼び出し、アイデンティティ、暗号化の周囲にセキュリティ制御をラップできる「エージェント・ガバナンス」を導入した。新しい3層アイデンティティ・モデルは、ユーザーを検証し、エージェントを管理し、機密性の高いアクションに対しては人間の承認を可能にする。また、NVIDIA OpenShellおよびNeMo Cloudによるセキュアなエージェント運用機能を発表し、ポリシー強制がエージェント実行に組み込まれた高度なプライベートAIエージェント向けの最新アクティブ・ランタイムを提供する。各エージェントは、データアクセス、システムインタラクション、許可されたアクションに対するガードレールを備えた隔離環境で動作する。
データ準備の面では、プライベートクラウドAIにNVIDIA AIデータプラットフォームと統合された「ガバナンス付きデータ層」を追加し、既存環境全体で企業データを準備・管理するための統一アクセスを提供する。Alletra Storage MP X10000は、リアルタイムのメタデータ強化とネイティブなモデル・コンテキスト・プロトコル・サポートを追加し、エージェントやアプリケーションが構造化・非構造化データ全体から適切なデータとコンテキストをより高速に取得できるようにした。HPEは、これによりカスタムの自作環境と比較して、価値実現までの時間を7~12カ月短縮できると主張している。
プラットフォームは、需要に合わせて容量を増強できるマルチノード推論をサポート。統一ゲートウェイにより、中央管理された認証情報、予算、ポリシーを通じて、フロンティアモデルやオープンソースモデルへのアクセスを1つのAPIで簡素化する。新しい構成では、推論専用に設計されたNVIDIA Vera CPU搭載のProLiant DL394を含め、最大256個のGPUまでスケールアップ可能だ。長いコンテキストのワークロードに対しては、共有キーバリューキャッシュ機能がコンテキストの再計算の必要性を減らし、最初のトークンまでのコスト削減と、コンピュート容量における大幅な性能向上を実現する。
HPEは「Unleash AI」プログラムを60以上のパートナーに拡大し、プライベートクラウドAI向けの数百もの検証済みユースケース、ブループリント、オーケストレーション・フレームワークを提供している。顧客事例には、機密性の高い医療データを保護しながら画期的な発見を加速させるセント・ジュード小児研究病院、ダラス・カウボーイズのフットボールおよびビジネス運営全体で戦略的意思決定を推進するBlue Star Operations、デジタルツイン・アプローチを用いてトーナメント体験を設計し、群衆管理から運用計画に至るまでのリアルタイム・イベント・インテリジェンスを強化するライダーカップなどが含まれる。
エンタープライズから主権AIまでを網羅するAIファクトリー・ポートフォリオ
同社は、AIファクトリー・ソリューションを、検証済みアーキテクチャ、エージェント型運用、エンタープライズグレードのサポートを通じて、価値実現までの時間を短縮し、実行リスクを低減し、初日から確実に稼働できる環境を整えるものとして位置付けている。このポートフォリオは、エージェント型エンタープライズ向けの安全でガバナンスの効いたパッケージ化済みAIファクトリーである「プライベートクラウドAI」、モデル構築者やサービスプロバイダーにサービスを提供する大規模マルチテナント環境向けの「AIファクトリー・アット・スケール」、政府や規制産業向けに現地のデータ、セキュリティ、コンプライアンス要件に合わせた展開を可能にする「主権AIファクトリー」という、異なる運用モデルを持つ顧客に対応する。
NVIDIAとの深い協力関係により、顧客はNVIDIA VeraやVera Rubinを含む最新のアクセラレーテッド・コンピューティング・プラットフォーム上に構築できる。ProLiantサーバー上のVera CPUは、企業全体のエージェント型ワークロードを強化している。スーパーコンピューティング分野では、VeraおよびVera RubinアーキテクチャがHPCとAIの両面でCrayポートフォリオを前進させている。AIファクトリー・アット・スケールでは、Vera Rubin NVL72が次世代のラックスケール・ソリューションを牽引する。NVIDIA Blackwellと比較して、Vera Rubin NVL72は4分の1のGPU数でAI学習を実現し、100万トークンあたりの推論コストを10分の1に抑えるなど、大幅な効率化を実現している。
HPEは、AIポートフォリオ全体で機密コンピューティングを標準化し、使用中の機密データ、モデル、ワークロードを保護する。NVIDIAの機密コンピューティングにより、AIワークロードはスタック全体でハードウェア保護された信頼できる実行環境で動作する。極めて機密性の高い環境にある組織向けに、主権AIファクトリーには防衛グレードのセキュリティ強化、連邦コンプライアンスへの対応準備、検証済み暗号化標準、グローバルなデータ保護要件が標準機能として組み込まれている。
ハードウェア面では、AMD Heliosシステム専用に設計された業界初のイーサネットベースのスケールアップ・ソリューション「QFX5252」を投入した。このスイッチは、SONiC OSを実行するOCP設計の一部として、1ラック内に72個のGPUを接続する。NVIDIA Vera CPU搭載のProLiant DL394 Gen12は、エージェント型AIと強化学習に必要な低遅延のメモリ・アクセス、帯域幅、コヒーレンスを、ProLiantに期待されるセキュリティと管理の容易さとともに提供する。同社はProLiant Edgeポートフォリオを拡大し、堅牢で分散された環境にセキュアなAI対応コンピュートをもたらすことで、意思決定が行われる場所に推論を近づけている。
供給制約がもたらす長期的な可視化と戦略的ポジショニング
投資家向けセッションにおいて、ネリ氏は6四半期先までの業績ガイダンスを提供する根拠となる供給ダイナミクスについて詳細に語った。同氏は供給制約を深刻なものと表現し、2027年度まで続き、2026年度のキャパシティはすでに完全に割り当て済みであるとした。「2026年度末には、現在よりも多くの面で高い受注残を抱えて年度を終えることになると予想しています」と述べ、サプライヤーとの長期契約が1年単位ではなく複数年にわたるようになったことを指摘した。
制約はGPUだけでなく、複数のコンポーネントに及んでいる。GPUについては、制約というよりもリードタイムの問題であり、急速なGPUのライフサイクルを考慮し、投機的な在庫積み増しではなく、顧客の確定したコミットメントに基づいて注文が行われていると説明した。しかし、パワーループ、冷却ループ、シャーシ、特にネットワーキング・トランシーバーなどの周辺コンポーネントには大きな制約がある。メモリは最も重要なボトルネックとして浮上しており、ネリ氏は「メモリのないCPUには価値がない」と指摘し、サプライヤーが新世代を優先するために旧世代のDDR4メモリ技術を軽視しているため、ネットワークスイッチでさえ制約に直面していると述べた。
独自のシリコンを中心とした同社の戦略的ポジショニングは、供給制約を乗り切る上で大きな優位性をもたらしている。ネリ氏は、MXルーター用のTRIOシリコンやPTXルーター用のExpress 5シリコンなど、ルーティング向けの専用シリコンロードマップをHPEが保有しており、ルーターに関してはマーチャントシリコン(汎用シリコン)に依存していないと詳述した。Aruba CXキャンパス・ブランチ・ポートフォリオ全体も、2015年にArubaに逆統合されたProCurve事業由来の、HPEが設計したシリコンで動作している。この独自シリコンは現在、Aruba CentralとJuniper Mistの両プラットフォームを通じて管理されている。
重要な点として、ネリ氏はキャンパス・スイッチングのシリコンが、ソフトウェア層だけでなくシリコン層でもセキュリティと融合しつつあると指摘した。次世代のCXスイッチは、ネットワーキングとセキュリティの融合シリコンを特徴とする。「次世代のCXスイッチは、ネットワーキングとセキュリティの融合シリコンとなります。これは、そのシリコンが真にプログラム可能であるため、私たちに大きな優位性をもたらす独自の価値提案です。すべてのアルゴリズムがシリコンに組み込まれているため、MistであれAruba Centralであれ、クラウド・コントロールプレーンからプログラムできるのです」と説明した。データセンター・スイッチについては、HPEはBroadcomの最大のOEMパートナーとなっており、外部サプライヤーに依存するマーチャントシリコンの割り当てにおいて優位性を確保している。
エンタープライズの近代化が牽引する従来のサーバー需要
HPEは、AI導入に向けたエンタープライズの近代化ニーズと、性能密度およびエネルギー効率の根本的な改善により、同社が「従来のサーバー」と呼ぶ分野で前年比3桁の受注成長を報告した。ネリ氏は、顧客は他社製の第10世代サーバー7台を現行世代のシステム1台に置き換えることで、スペース要件を7分の1に削減し、エネルギー消費を最大65%削減しながら、コアとメモリ密度の向上を通じて性能を劇的に高めることができると説明した。
投資家とのQ&Aセッションでネリ氏は、ハードウェア価格の上昇に対する顧客の対応について触れ、顧客は可能な限り資産寿命を延ばしたいと考えるのが自然である一方、AI導入のためにインフラを近代化するという要請はかつてないほど強まっていると述べた。「コストが原因で減速したことはありません。むしろ加速しています。2027年度になればコスト曲線はより安定しますが、依然として非常に高い水準を維持すると考えているため、この傾向は続くと見ています。では、18カ月、2年待つのか?誰にわかるでしょう?」と語った。
HPE Financial Servicesは、レガシー資産の減価償却を加速させ、古いインフラを撤去し、再投資のための資本を解放する機能を通じて、顧客の移行管理において重要な役割を果たしている。重要なのは、多くの顧客が資本支出(CapEx)から運用支出(OpEx)モデルへと転換しており、AIイニシアチブを小さく始め、結果に基づいて拡張するというアプローチがより賢明だと考えている点だ。支払いモデルに関係なく、すべての導入はGreenLake Cloudの統合コントロールプレーンに接続され、インフラにソフトウェア・サブスクリプションが紐付いている。
今後の展望についてネリ氏は、2030年までのAI需要の大半は学習ではなく推論に集中すると示唆し、推論がどこで行われるのか、どのようなアーキテクチャが展開されるのか、推論が集中化するのか分散化するのかといった重要な問いを投げかけた。同氏は、CPUとGPUの比率は推論の種類によって異なり、4対8の範囲になる可能性があると予測した。同社は、スケール、コスト、エネルギー消費を解決するために、キーバリューキャッシュ・コアやネットワーク・ファブリックに関する革新を通じて、層とオーバーヘッドを削減するアーキテクチャの改善に取り組んでいる。
主権AIとハイパースケーラーが提示する異なる機会
ネリ氏は主権AIの機会について、地政学的な考慮に突き動かされ、主権原則の下でAIクラウドを提供するために投資を行う政府の研究機関や組織の組み合わせからなる、12~15の有意義な機会で構成される市場だと表現した。課題は資本の可用性にあり、地域によって劇的に異なる。「ここ米国では非常に簡単です。いくら必要で、いくら払う意思があるかという話です。しかし欧州に行くと、終わりのない戦いです。アイデアは豊富ですが、資金調達能力は複雑です」とネリ氏は述べ、ある欧州の組織がギガワット規模の施設に40億ドルを割り当てていたが、実際にはその数倍の投資が必要だったという会話を振り返った。
多くの主権イニシアチブは、政府が規制や地政学的インセンティブを通じて民間資本を呼び込もうとする過程で、長い販売サイクルに直面している。HPEは、英国の「AI Bristol Cloud」や欧州連合にサービスを提供するノルウェーの「Lumiシステム」など、主権AIクラウドを展開してきた。中東での勢いは地域紛争により大幅に減速したが、UAEでは進展が続いている。重要な隣接分野はスーパーコンピューティングであり、HPEはオークリッジ、アルゴンヌ、ロスアラモス、リバモア国立研究所など、すべての主要な米国国立研究所にエクサスケール・システムを提供している。これらの施設は現在AIシステムを追加しており、オークリッジのフロンティア・エクサスケール・スーパーコンピューターには「Mission」および「Lux」AIシステムが加わり、HPEが専門知識と信頼を確立している環境で拡張の機会を生み出している。
ハイパースケーラーおよび大規模サービスプロバイダーのセグメントについて、ネリ氏は違いを生む規模の顧客は約50社と推定したが、金融工学を通じてAI構築に参加する企業が増えるにつれてその数は増加している。これら50社の顧客は何百万ものGPUを消費し、非常に高い取引価値を生む。対照的に、何十万ものエンタープライズ顧客は、顧客あたりの取引価値は大幅に低いものの、より少ないGPUを消費する。ネリ氏は、将来的に困難な比較対象を生む可能性のある売上規模を追うのではなく、運転資本の収益と利益率に注力することを強調し、どちらのシナリオでもHPEは不可欠なインフラとしてのネットワーキングで勝利すると述べた。
従来のハイパースケーラー向けサーバービジネスについて、ネリ氏は、利益率が存在しないため2017年にそのセグメントへの販売を停止するという決断を下しており、機会は数年前にクラウドへ移行したと指摘した。ハイパースケーラーは多くの場合、AWS Gravitonのような独自の設計やシリコンを保有しており、HPEの関与は、ハイパースケーラーのコア環境にボリュームサーバーを販売するのではなく、顧客が直接コントラクト・マニュファクチャラーやODMと契約する環境への「オンランプ(導入経路)」としてHPE製品を使用するエッジ環境に焦点を当てている。
長期的な制約に対処する研究と新技術
ネリ氏は、電力をAIインフラ構築における決定的な制約と位置付け、米国は2028年までに19ギガワットの電力不足に直面し、データセンターは2030年までに米国の電力需要増加の半分近くを占めると予想されると指摘した。同社は、AI時代の到来に必要な次世代ガスタービンとエネルギーインフラの開発にAIを応用する顧客としてSiemens Energyを紹介した。「AIがスケールするにつれ、未来はコンピュート単体では定義されません。どれだけ効率的に電力を供給し、冷却し、接続できるかによって定義されます」とネリ氏は述べた。
HPE Labsは、コンピュートサーバー、ネットワーキング、ストレージ、ソフトウェア、セキュリティにわたるシステムレベルの専門知識を活用し、AIシステム自体をよりスケーラブルかつ持続可能にするためにAIを応用している。同社は、「GreenLake Intelligence」を通じて、ワークロードのパターンを学習し、アプリケーションが要求する前にデータを必要な場所に配置できる予測型の自律インテリジェンスを開発している。より広範なデータセンター環境全体で、HPEはAIを使用してアイドルパターンを特定し、性能を損なうことなくエネルギーと水の使用量を削減することでリソース管理を改善している。
量子コンピューティングについて、ネリ氏は実用的なエンジニアリングの観点から、暗号化のような特定のアプリケーションには有望である一方、実用的なシステムは高度に有用なアプリケーションに必要な1万量子ビットには程遠く、業界は現在、複数の競合技術で1,000量子ビット前後で頭打ちになっていると指摘した。HPEのアプローチは、同社が量子進歩を加速できる3つの分野に焦点を当てている。エコシステムの構築、スケールアップ・システムを待つのではなくスケールアウト量子アーキテクチャを可能にするネットワーキングの開発、そして従来のコンピュートをスケールアウト・モデルで使用して量子アプリケーションを開発する環境の構築である。
同社は、世界クラスのHPCおよびAIインフラを拡張して量子をリアルタイムかつ現実世界の展開に近づける、フルスタック・プラットフォームを通じたハイブリッド量子を推進するための業界連携の拡大を発表した。HPEはすでにスーパーコンピューターを量子システムに接続しており、スーパーコンピューターが主要な作業を行い、特定のタスクを量子に渡して高速処理させ、結果を返すという仕組みを実現している。「量子は暗号化などあらゆることに素晴らしいでしょう。しかし最終的には、従来のコンピューティングに対するアクセラレータの一形態になると考えています」とネリ氏は締めくくり、量子を代替技術ではなく補完技術として位置付けた。
HPEのエッジコンピューティング機能を強調する少し軽い話題として、ネリ氏は、同社がすでに国際宇宙ステーションで「Spaceborne 2」として小さなAIデータセンターを運用しており、宇宙飛行士が研究に使用していることを紹介した。年末までには、Artemis 3がHPEのコンピュートモジュールとネットワーキングを搭載した初の月面ローバーを展開する予定であり、ミッションコントロールもHPEのインフラ上で実行される。これは、量子コンピューティングのブレイクスルーを待たずとも、同社が極限のエッジ環境でいかに能力を発揮しているかを証明するものだ。
HPE深掘り:AI統合の「堀」とエンタープライズの復権
エンタープライズAIファクトリーのアーキテクチャ
Hewlett Packard Enterprise(HPE)は、世界のデジタルインフラ転換における構造的な中核を担い、ハイブリッドクラウドコンピューティングと人工知能(AI)への移行から収益を上げている。同社の基本的なビジネスモデルは、高度なコンピューティング、ストレージ、ネットワーキングのハードウェアを設計・製造・保守し、そこに独自のソフトウェアとサービス層を付加することにある。かつてはオンプレミス型ハードウェアの売り切り販売を行っていた同社だが、現在は「GreenLake」プラットフォームを軸に、消費量に応じた継続的な収益モデルへと計画的に移行した。GreenLakeは、パブリッククラウドの柔軟性を模倣しつつ、プライベートデータセンター固有のデータ主権と局所的な制御を維持したまま、オンプレミスインフラをサービスとして利用することを可能にする。2025会計年度末時点で、同プラットフォームの年間経常収益(ARR)は19億ドルを超えており、2026会計年度末には35億ドルに達する急成長軌道を維持している。これは単なる会計上の変更ではなく、HPEを不安定な設備投資(CAPEX)サイクルから、エンタープライズの運用コスト(OPEX)予算に深く組み込むための構造的な変革である。
同社は、コンピューティング、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)およびAI、ストレージ、ネットワーキングという、個別に存在しながらも相互に高いシナジーを生むセグメントで収益を上げている。現在のサイクルにおいて、同社はサーバーを単なるコモディティ製品として販売することはない。代わりに、完全に統合された「AIファクトリー」として市場に投入している。これらの導入パッケージには、高密度コンピューティングノード、大規模言語モデルに最適化された非構造化データストレージ、そしてノード間のレイテンシを排除するために不可欠なネットワークファブリックが含まれる。収益は、直接的なハードウェア販売、複数年のサービスレベルアグリーメント(SLA)、社内金融部門を通じたファイナンス、および継続的なソフトウェアライセンスを通じて創出される。この統合スタックへの戦略的転換により、AIサーバークラスターを購入する顧客に対し、独自のスイッチング製品、液冷インフラ、テレメトリソフトウェアをシームレスにクロスセルし、導入されたラックごとの生涯価値(LTV)を最大化している。
市場力学、競合、そしてサプライチェーンの現実
エンタープライズインフラの競争環境は、莫大な資本要件と複雑なサプライチェーンの調整を背景に、強固な寡占状態へと急速に集約されている。2026年に2,450億ドル規模に達すると予測される世界AIサーバー市場において、HPEは推定15%のシェアを握り、世界第2位の地位を確固たるものにしている。これは約20%のシェアを持つDell Technologiesに次ぐ順位であり、Lenovo(11%)やSupermicro(9%)を上回る。PC市場という周期的かつ低利益率の市場に依然として強く依存するDellとは異なり、HPEはインフラ専業ベンダーとして運営されている。この構造的な現実は、複雑なAI導入をスケールさせるエンタープライズの最高情報責任者(CIO)にとって、極めて魅力的な運用上の焦点となっている。
同社は、レガシーデータセンターを近代化する世界的な大企業と、主権国家や代替的なクラウドサービスプロバイダーという急成長中の顧客層の2つをターゲットにしている。この戦略が正当化された決定的な事例が、2026年半ばに発生した。代替ハイパースケーラーであるVultrが、グローバルなAIデータセンター拡張のために、HPEの高度に設計されたNvidia GB300 NVL72ラックスケールシステムを採用したことである。これらのシステムを利用するエンドユーザーは、低レイテンシの推論ワークロードのために、大規模で分散されたコンピューティングパワーを必要としている。一方で、サプライヤー基盤は極めて集中している。同社は、Nvidia、AMD、Intelという3大先端シリコン設計企業に加え、DRAMおよびNANDコンポーネントを供給する数社のグローバルなメモリサプライヤーに根本的に依存している。2026年のテクノロジーサイクルにおける構造的なボトルネックは、依然としてコンポーネントの供給能力にある。メモリの供給制約と価格高騰により、同社は粗利益を維持するために複数回の価格調整を余儀なくされてきた。しかし、HPEはその巨大な規模を活かして主力GPUの優先的な割り当てを確保しており、サプライチェーンにおけるレバレッジを記録的な受注残高へと効果的に転換している。
シリコン、冷却、ネットワーキングという「堀」
HPEの核心的な競争優位性は、独自の冷却知的財産(IP)、シリコンパートナーシップの深さ、そして新たに支配的な地位を確立したネットワーキングポートフォリオという3つの柱からなる「統合の堀」にある。業界がレガシーアーキテクチャから次世代AIシリコンへと移行する中、ラックの電力密度は従来の15キロワットから120キロワットを超える極限状態へと急上昇している。この密度では、従来の空冷方式では物理的に熱故障を防ぐことは不可能である。HPEは2019年のCrayの13億ドルでの買収を通じて、業界をリードするチップ直接冷却(Direct-to-Chip)技術を、市場全体がその必要性を認識するよりもはるかに早く取り込んだ。これにより同社は構造的なハードウェアの堀を構築した。HPEは、ネイティブなスーパーコンピューティングのDNAを持たない競合他社が大規模な環境で信頼性を確保するのに苦労する中、AMD HeliosやNvidia Blackwellのスーパーコンピューティングクラスターを、熱管理システムを組み込んだ状態で展開できるのである。
同社の競争優位性を決定的に強化したのは、2025年7月に正式に完了したJuniper Networksの140億ドルでの買収である。それ以前、同社のネットワーキング部門であるArubaは無線やキャンパス環境では高い競争力を誇っていたが、Ciscoに対抗するために必要なデータセンター向けスイッチング能力を欠いていた。Juniperの統合により、エッジからクラウドに至る包括的なネットワーキングポートフォリオが完成し、エンタープライズ無線LAN市場で即座に約19%のシェアを獲得、Ciscoの37%のシェアを直接脅かす存在となった。さらに、この買収はネットワーク運用のための業界をリードするAIエンジン「Mist AI」をもたらした。Mist AIを既存ポートフォリオに統合することで、同社は自律型AIがネットワークのボトルネックを自動的に特定・修復する「セルフドライビング・ネットワーク」アーキテクチャを提供している。コンピューティング、ストレージ、インテリジェントなネットワーキング間のこの深い統合は、強力なスイッチングコストを生み出す。企業がこの統合されたAI管理スタックをデータセンターに導入すれば、それを撤去し、断片化されたマルチベンダー環境に置き換えるために必要な財務的・運用上の摩擦は、法外に高くなる。
機会、脅威、そしてエージェンティック(Agentic)な地平
AIの実験段階から本格的な本番推論への移行は、今後5年間で同社にとって最大の収益拡大機会となる。ハイパースケーラーが大規模な基盤モデルのトレーニング市場を支配する一方で、これらのモデルの実際の応用、すなわちエージェンティック(自律型)ワークフロー、ローカルデータ処理、リアルタイム推論には、分散型インフラが必要となる。企業は、機密性の高い独自の企業データをパブリッククラウドに送って処理することを望んでいない。HPEは、このオンプレミスAI推論市場を獲得する独自の地位にある。GreenLakeを通じて検証済みかつ極めて安全なプライベートクラウドインフラを提供することで、同社はパブリッククラウドの俊敏性と、オンプレミスハードウェアの局所的なデータ主権を両立させている。QFX5140のようなエッジAI専用の推論スイッチの導入は、エッジAIに必要な特定のネットワークトポロジーを支配しようとする同社の意図を示している。
しかし、業界動向には深刻な構造的脅威も存在する。最も差し迫ったリスクは、エンタープライズIT予算の循環性と、AI導入に伴う資本集約性である。生成AIによって約束された生産性向上が企業の利益率に結びつかなければ、現在のインフラ投資ブームは激しく収縮する可能性がある。さらに、ハードウェアのコモディティ化による継続的な利益率への圧力にも直面している。液冷や統合ネットワーキングが現在の差別化要因となっている一方で、ベースとなるコンピューティングハードウェアは、ハイパースケールのボリュームを獲得するために営業利益率を犠牲にすることも厭わないSupermicroやLenovoといった攻撃的な競合他社との価格競争に晒されている。サプライチェーンの脆弱性も存続を脅かすリスクである。同社は台湾の半導体製造・組み立て事業に大きく依存しており、社内の卓越した運用能力だけでは容易に緩和できない地政学的リスクにさらされている。
破壊的参入者と構造的な逆風
従来のエンタープライズハードウェア市場は、グローバルなサポート物流と資本要件という高い参入障壁によって守られているが、専門的なネットワーキング参入者やクラウド消費の構造的変化により、破壊は加速している。Arista Networksは、もはやスタートアップではないが、データセンター向けスイッチングにおける極めて焦点の絞られた破壊的勢力として機能している。高速な100Gから800Gスイッチング市場で30%近いシェアを獲得しているAristaは、ソフトウェア定義の超低レイテンシファブリックが優先される大規模導入において、HPEとJuniperのネットワーキング部門にとって継続的な脅威となっている。冷却分野においても、高度な二相式液浸冷却や精密なチップ直接液冷技術を専門とするアジャイルなスタートアップが熱管理技術を急速に進化させており、レガシーなOEMは陳腐化を避けるためにこれらを注視し、買収していく必要がある。
最も深刻な構造的破壊は、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloudといったパブリッククラウドのハイパースケーラー自身からもたらされている。これらの企業は、従来のインフラベンダーを完全にバイパスする傾向を強めている。彼らは独自のカスタムシリコンアクセラレーターを設計し、独自のネットワークファブリックを構築し、アジアのホワイトボックスODM(受託設計製造業者)から直接ハードウェアを調達している。ハイパースケーラーが世界のコンピューティングワークロードのシェアを拡大するにつれ、従来のエンタープライズインフラの対象市場は本質的に縮小する。HPEは、データセキュリティ、コストの予測可能性、レイテンシ制御に根ざした同社のハイブリッド・オンプレミスという価値提案が、大手クラウドプロバイダーからコンピューティング能力を借りるだけの選択肢に対するプレミアムを正当化することを、継続的に証明しなければならない。
経営陣の実行力:ネリのマスタークラス
アントニオ・ネリ最高経営責任者(CEO)による過去数年間の運用実績は、企業再編のマスタークラスと言える。ネリがリーダーシップを引き継いだ際、同社はクラウドファーストの世界で利益率の低下と構造的な無関係さに苦しむ、停滞したレガシーハードウェアベンダーと広く見なされていた。ネリはレガシーな運用構造を体系的に解体し、組織をエッジコンピューティング、ハイブリッドクラウド、専門的なAIインフラへと容赦なく転換させた。2019年にCrayを買収した戦略的先見性は、現在のAIサーバーブームの基礎となるアーキテクチャを提供し、経営陣がスーパーコンピューティングの軌道を市場全体よりもはるかに先読みしていたことを証明した。
しかし、経営陣の実行力の決定的な試金石となったのは、140億ドルを投じたJuniper Networksの買収である。大規模なテクノロジー買収は、文化的な摩擦、製品ロードマップの混乱、販売チャネルの共食いによって株主価値を毀損することが多い。ネリは司法省による厳しい独占禁止法審査を乗り越え、2025年7月に取引を完了させた。統合の実行は極めて正確であった。2026会計年度第2四半期までに、同社は前年同期比40%増の107億ドルという大幅な増収を報告し、ネットワーキング部門は152%増の27億ドルへと急成長した。Juniperの旧経営陣を維持し、ラミ・ラヒムを統合ネットワーキング部門のトップに据えた決定は、重要なエンジニアリングの才能を保護した。JuniperのMist AIを既存のArubaポートフォリオへ迅速に相互展開したことは、経営陣が運用上のシナジーを臨床的な効率性で実現していることを示しており、その結果、セグメント営業利益率は23%を超えている。この実績は、機関投資家からの高い信頼を獲得している。
スコアカード
HPEは、レガシーハードウェアプロバイダーから、エンタープライズAIエコシステムの不可欠なアーキテクトへと見事に変貌を遂げた。基本的な投資テーゼは、GreenLakeを通じた経常収益モデルへの転換と、高度に差別化されたハードウェアスタックにある。独自のチップ直接液冷IPと、Juniper Networks買収後の圧倒的なエッジ・ツー・クラウド・ネットワーキングポートフォリオを組み合わせることで、同社は強固な「統合の堀」を構築した。複雑で高密度なAI推論クラスターを導入する企業は、検証済みのコンピューティング、専門的な非構造化データストレージ、そしてそれらを接続するセルフドライビング・ネットワークファブリックを提供できる単一のベンダーにますます依存するようになっている。2026会計年度の記録的な収益成長と営業利益率の拡大に裏打ちされた経営陣の臨床的な実行力は、戦略的ロードマップを正当化し、低利益率の単純なボックス組み立て業者と同社を効果的に差別化している。
ただし、インフラ市場に内在する構造的な課題を無視することはできない。同社は依然としてNvidiaとAMDが支配する脆弱で極めて集中したサプライチェーンに強く依存しており、コンポーネント不足や投入コストのインフレに対して脆弱なままである。さらに、パブリッククラウドのハイパースケーラーの絶え間ない拡大と、第2層ハードウェアメーカーの攻撃的な価格戦略は、長期的な利益率への圧力を継続的に生み出している。こうした構造的な逆風にもかかわらず、エンタープライズセクターへの専業的な注力、消費量ベースの強固な収益基盤、そしてネットワーキングと熱管理における明確な技術的優位性は、AIインフラ環境における同社の独自の立ち位置を確固たるものにしている。深いエンジニアリングIPと卓越した運用実行力の組み合わせは、同社を極めて守りの堅いエンタープライズインフラ資産として正当化するものである。