Nickel Industries、Sampala鉱区の価値を5.4倍に引き上げ―HPAL株式交換と1億6,900万ドルのTMI投資を実施
2026年6月23日 特別カンファレンスコール
Nickel Industriesは、最近取得したSampalaニッケル鉱区の価値を5.4倍に引き上げる2つの取引を発表した。同社は1億6,900万ドルの現金支出により、混合水酸化物沈殿物(MHP)ベースで年間1万7,000トンのニッケル生産権を確保する。具体的には、Sampala鉱区の権益18%を、評価額6億7,100万ドルのCNE HPAL(高圧酸浸出)施設の権益36%と交換する。また、別途Teluk Metal Indonesia(TMI)プロジェクトの権益17.5%を1億6,900万ドルで取得する。この投資額はニッケル1トン当たり約1万500ドルに相当し、インドネシアの既存HPALプロジェクトの建設コストが1トン当たり2万~3万ドルであることと比較して、極めて高い資本効率を実現している。
マネージング・ディレクターのJustin Werner氏は、特にCNEとの取引について「Sampalaプロジェクトの価値を13億ドル以上と証明するものであり、NIC(Nickel Industries)の取得価格から5.4倍の価値向上となる。しかも、まだ取得代金の支払いは完了していない段階での評価だ」と強調した。同社は今年初め、Sampalaの資源量をニッケル品位1.2%で10億湿重量トン以上に上方修正しており、Werner氏はこれを「世界クラス」の資産と評している。
戦略的根拠と早期の価値抽出
今回の取引は、鉱山資産の極めて早期のマネタイズ(収益化)を意味する。CNEとの株式交換により、Nickel IndustriesはSampalaの権益を60%から42%に引き下げる一方、追加資本を投じることなく、下流工程であるHPAL処理への参入を果たす。Hengjaya鉱山運営で15年来の協力関係にあるインドネシアの現地パートナーもCNEの所有権に参加し、Sampalaの権益を40%から28%に縮小する。また、Shanghai DecentのHengjaya事業体が新たにSampalaの権益30%を保有する。
Werner氏は経済効果の詳細を説明した。RKAB(年間作業計画・予算)割当が年間2,000万トン、現在のマージンが1トン当たり10ドルと仮定した場合、取引前のSampalaのANNおよびETL鉱区における60%の権益は、1,200万トンの鉱石販売から年間1億2,000万ドルのEBITDAを生み出す。取引後、権益が42%に低下すると、対象鉱石量は840万トンとなり、EBITDAは年間8,400万ドルに減少する。しかし、新たに確保したMHPベースのニッケル1万7,000トンが、現在の1トン当たり1万ドルのマージンで1億7,000万ドルのEBITDAをもたらすため、合計EBITDAは取引前の1億2,000万ドルから2億5,400万ドルへと大幅に増加する。
仮にHPALのマージンを保守的に1トン当たり5,000ドルと見積もっても、計算結果は依然として魅力的だ。保有するSampala権益(42%)から8,400万ドル、MHPの1万7,000トンから8,500万ドルの利益が得られ、合計1億6,900万ドルとなる。これはTMIへの投資額と同額であり、1年での投資回収が可能であることを示唆している。
HPAL投資の完結
Werner氏は、インドネシア政府が新規HPALプロジェクトに対してモラトリアム(一時停止)を課している現状を踏まえ、今回の取引を「高利益率のHPALセグメントへの投資の旅の完結」と表現した。同社は、インドネシア政府がNPI(ニッケル銑鉄)の急速な拡大から教訓を得たと説明した。NPIは供給過剰を招き、マージンが初期の1トン当たり6,000ドルから2024~2025年には1,500ドル、あるいは損益分岐点付近まで低下した経緯がある。インドネシアは10年後までに世界のニッケル生産の75%を占める見通しであり、政府はRKAB割当や生産モラトリアムを通じて供給管理に乗り出している。
Nickel Industriesは現在、4つのプロジェクトを通じて年間約6万トンのHPALニッケル生産権を管理しており、NPIの12万5,000トンと合わせて、HPAL対NPIの生産比率は約1対2となっている。HPALポートフォリオの第一弾であるHNCは、10%の権益で年間8,500トンの生産権を有し、第1四半期には1トン当たり9,992ドルのマージンを記録。現在は定格能力を40%上回る稼働を続けている。また、ENCの権益46%を保有し、3万3,000トンの生産権を確保している。ENCは世界で初めてMHP、硫酸ニッケル、カソード製品を生産するHPAL施設であり、7月にMHPの初生産、2026年10月には定格能力への到達を見込んでいる。今年度はMHPベースで約2万トンのニッケル生産を目標としている。
TMIは、定格能力3万9,000トンの施設から6,775トンの生産権を追加し、2027年9月までにフル稼働を目指す。株主には韓国の上場企業であるLS MnM、日本の総合商社であるハンファ、およびEVサプライチェーンの戦略的投資家が名を連ねている。CNEは定格能力2万8,357トンのうち1万208トンの生産権を寄与し、2027年半ばの試運転、同年中のフル稼働を予定している。両施設とも、TMIについては9億6,500万ドルの設備投資(CapEx)保証があり、Sampalaからパイプラインを通じて鉱石が供給される(ENCと同様の構成)。
資金調達とバランスシート管理
CFOのChristopher Shepherd氏は、両資産とも現在は無借金であり、株式による資金調達が行われていると説明した。TMIへの1億6,900万ドルの支払いは2026年11月に予定されており、手元資金および営業キャッシュフローで賄う。青山鋼鉄(Tsingshan)が必要に応じて商業条件での債務保証を提供しているが、経営陣はこれが株式のオーバーハング(需給懸念)リスクを排除し、パートナーシップの強固さを示すものだと強調した。
同社はANNおよびETL鉱区の取得に向け、すでに2,850万ドルの前払いを完了している。今後数ヶ月以内にETL向けに500万ドル、2027年4月にANNの残額1億4,400万ドルの支払いが予定されている。Shepherd氏は「既存の現金残高と今後のキャッシュフローで十分に賄える」との見解を示しつつ、Tsingshanのコミットメントは「今後6~9ヶ月間で万が一マージンが予想を下回った場合の備え」であると説明した。
配当については、直近の半期決算後の分配方針は取締役会でまだ検討されておらず、四半期ごとの業績に基づいて判断すると述べた。1億6,900万ドルのTMI投資は、今後の業績次第で配当に回せる資本を減少させる可能性がある。
RKAB割当要件と資源配分
各HPAL施設は年間約1,200万~1,400万トンの褐鉄鉱を必要とする。ENCはHengjaya鉱山から、TMIとCNEはSampalaから市場価格で鉱石を調達する。Werner氏は、Sampalaが3つの独立したIUP(鉱業事業許可)で構成されているため、柔軟な対応が可能だと指摘した。個別の許可に対する割当が少なくても、合計で1,400万トンの閾値を満たせばよいためだ。ANNとETLがそれぞれ700万トンを受け取れば要件を満たし、さらにGita FloraのIUPを予備の供給源として活用できる。Hengjaya鉱山は過去に有利なRKAB割当を受けており、Sampalaも下流のHPALと統合され、政府の付加価値生産政策に合致していることから、同様の評価が期待できると経営陣はみている。
運営詳細と製品配分
HPALの主要な投入物である硫黄について、Werner氏は各プロジェクト間で競合することはなく、株主構成が異なっても施設間で優先順位をつけず「平等に運営される」と述べた。TMIおよびCNEの生産物のオフテイク(引取)契約については、自社の権益分以外については他株主の商業的取り決めに関与できないとしてコメントを控えた。
ENCは、SpaceXの認定スーパーアロイサプライヤーであり、同社と10年間の長期契約を結ぶ唯一の企業である韓国の上場企業Sphereの投資によってその価値が裏付けられている。TMIとCNEは両社ともタックスホリデー(免税措置)を申請しており、インドネシアでは通常15年間の免税に加え、その後2年間は11%の税率が適用される。
戦略的焦点と今後の方向性
Werner氏は、インドネシア以外に同等の鉱石資源、品位、既存インフラ、15年間の免税措置を含む政府優遇策を提供する地域は存在しないとし、インドネシア国外での成長機会は限定的であるとの認識を示した。インドネシア国内でのNPIおよびHPALの新規能力増強がモラトリアム対象となった今、今後の投資は上流のニッケル鉱石資源に集中する。Sampalaの取引は、その価値創造の可能性を実証した。Werner氏は「Sampalaのような案件があれば、その資源の長寿命、低い資本集約度、そして極めて低い取得コストを考慮し、間違いなく検討するだろう」と語った。
同社はまた、5月の生産データにNPI市場の回復傾向が表れていると指摘した。中国とインドでのステンレス鋼需要の増加が供給制約と合致し、好調なNPIパフォーマンスが続くと予想している。地政学的なボラティリティが解消されればHPALのマージンはさらに強化される見通しだが、現在の1トン当たり1万ドルのマージンはすでに「非常に高く健全な」水準であり、ポートフォリオ全体の強力なプロジェクト経済性を支えている。