Novonesis、通期見通しを上方修正 初の10億ユーロ自社株買いを発表、食品・飲料部門の成長が乳製品以外にも拡大
2026年度上期決算説明会、2026年8月20日
Novonesisは2026年度上期のオーガニック売上高成長率が8%に達したことを受け、通期の成長率見通しを7〜8%に上方修正した。同時に、同社初となる総額10億ユーロの自社株買いプログラムを発表し、2029年までに実施する方針を明らかにした。NovozymesとChr. Hansenの合併により2023年に誕生した同社にとって、今回の決定は資本配分における重要な転換点となる。経営陣は、数年にわたる設備投資(CapEx)の急増が成果を上げ始めていること、そしてレバレッジが低下し株主還元を行う余力が整ったことへの自信を示した。
資本配分の転換:自社株買いが示す設備投資の成果
Rainer Lehmann最高財務責任者(CFO)は、今回の自社株買いについて、同社の高水準な投資サイクルが一時的なものであり、着実にリターンを生んでいることの証明であると強調した。「設備投資の増大は一時的なものであると繰り返し述べてきた。そのピークは今後2年間だ。2030年までには、設備投資比率は1桁台後半に落ち着くだろう」と述べた。また、自社株買いを実施しても「デレバレッジ(負債削減)を継続する余地は十分にある」とし、1億〜2億ユーロ規模の小規模なM&A(ボルトオン買収)を継続する資金も確保されていると説明した。純負債対EBITDA倍率は年末に約1.8倍、将来的には1.7倍程度に収束する見通しで、目標範囲である約1.5倍に向けたデレバレッジを進めつつ、自社株買いも並行できる水準にある。Lehmann氏は、当面は設備投資が重なるため、自社株買いは複数年の期間のうち「後半に重点を置く」と補足した。2026年および2027年の設備投資比率は売上高の12〜14%を見込むが、米国でのカルチャー(乳酸菌等)生産能力の増強、新興国での大規模酵素生産拠点、タイでのHMO(ヒトミルクオリゴ糖)生産能力の拡大、および新しいERPシステムの導入を経て、2030年には1桁台後半へと正常化する見通しだ。
食品・飲料部門の強さ、乳製品依存からの脱却
今四半期の業績で最も重要な示唆は、食品・飲料部門が上期および第2四半期に記録した11%の成長が、従来の乳製品偏重型ではなく、ベーカリー、飲料、食肉、植物性食品など幅広い分野で達成された点にある。Ester Baiget最高経営責任者(CEO)は、合併により酵素とカルチャーの事業を統合した成果だと指摘した。「成長を牽引する要因は2つある。当社のバイオソリューションは、コスト削減、生産性向上、歩留まり改善、差別化された製品訴求、クリーンラベル化、より健康的な食品や高タンパク製品の提供を可能にする。これらの需要はかつてないほど高まっており、当社はそれを実現するのに最適な立場にある」と語った。乳製品分野のモメンタムも依然として堅調で、GLP-1受容体作動薬の普及に伴う高タンパク・プロバイオティクス製品への需要や、チーズ製造における同社の「DVS」フォーマットへの移行が寄与している。
家庭用ケア部門は12%増、ただし比較対象のハードルに留意
家庭用ケア部門は上期に8%、第2四半期には12%の成長を記録した。ただし経営陣は、この加速の大部分は需要の構造的な変化というよりは、前年同期の比較対象が低かったことによる反動であると慎重な姿勢を示した。成長の背景には、昨年採用した約400名の営業担当者(3分の2は新興国市場に配置)による市場浸透の進展がある。原油価格の上昇や原材料の調達環境が洗剤用酵素の需要に与える影響については、顧客と対話を続けているものの、現時点では目立った変化は見られないとした。
ヒューマンヘルス部門は北米サプリメントの不振が重石に
ヒューマンヘルス部門の上期成長率は4%にとどまり、通期でも小幅な成長にとどまる見通しだ。Baiget氏が「一時的に慎重」と表現した北米の消費者心理を背景に、栄養補助食品(サプリメント)が足を引っ張っている。一方、HMO事業は中国への越境取引を含め力強い成長を続けており、現在ヒューマンヘルス部門の売上高の約10%を占めるまでになった。ただし、規模が拡大するまではグループ全体の利益率を押し下げる要因となる。Advanced Protein Solutions部門は主要顧客とともに成長した。プロバイオティクス強化乳製品がサプリメントの需要を食っているのではないかという懸念に対し、Baiget氏は両者の関連性は薄いと否定。北米のサプリメント不振は「孤立したケース」であり構造的な変化ではないと強調し、Novo Nordiskとの共同プロジェクトであるGLP-1患者に対するシンバイオティクス効果の検証を挙げ、同カテゴリーの将来性に自信を見せた。
MicroBioGen買収で酵母・バイオ燃料の垂直統合を強化
Novonesisは、2013年から少数株主として出資していた酵母技術企業MicroBioGenの残りの株式77%を取得する。Lehmann氏は、この買収をバイオ燃料分野における「垂直統合」と位置づけ、利益率を「わずかに押し上げる」効果があり、これまで完全には制御できていなかった独自の酵母技術を獲得できると説明した。これは、自社株買いやオーガニックな再投資と並ぶ、資本配分の3本柱の一つとしての技術獲得型ボルトオン買収である。
エネルギー・農業:E15の選択肢はガイダンスに含まず
農業・エネルギー・技術部門は上期に6%成長した。トウモロコシ由来エタノールの生産増と輸出需要を背景に、中南米、アジア太平洋、北米でエネルギー関連が2桁成長を遂げた一方、農業サブセグメントは米国の農業経済の低迷により打撃を受けた。米国で下院を通過し、秋に上院公聴会を控える通年でのE15エタノール承認について、Baiget氏は「長期的な財務計画には盛り込んでいない」と明言した。同社は、単一国の規制による恩恵よりも、エネルギー安全保障を背景としたブラジル(E30への移行とE32の試験運用)、インド、東南アジアでのバイオ燃料混合の動きを、より持続的な成長ドライバーと見ている。
「出来過ぎ」との懐疑論に経営陣が反論
JPMorganのChetan Udeshi氏から、現在の成長が持続不可能ではないかという投資家の懸念について問われた際、Baiget氏は再投資の強さを根拠に反論した。「バイオソリューションは、将来の世界の生産・消費のあり方を決定づける構成要素だ。私がすべきことは、実績を出し続け、それが真実であることを示し、このトレンドを誰の目にも明らかなものにすることだ」。同社は売上高の約10%を研究開発に投資し、営業体制を大幅に強化しており、成長は一時的な追い風ではなく、継続的な投資によって支えられていると主張する。上期の営業費用はオーガニックベースで1桁台後半の伸びとなり、売上高の加速と連動している。これは、成長が意図的な再投資によってもたらされているという同社の主張を裏付けている。
ガイダンスのメカニズム:関税と比較対象が下期の成長を抑制
通期見通しの上方修正にもかかわらず、経営陣は下期の成長が上期の8%ペースから鈍化する要因をいくつか挙げた。これには、米国関税の顧客への払い戻しによる約40ベーシスポイントのマイナス影響、第3四半期の厳しい前年比較、第1四半期を押し上げた主要な動物飼料顧客における在庫積み増しの解消が含まれる。Lehmann氏は、関税の払い戻しは売上高の指標には影響するものの、費用ではなく売上高からの控除として処理されるため、EBITDAには中立であると確認した。
Feed Enzyme Allianceの統合は1年を経て順調
Feed Enzyme Allianceの買収完了から1年が経過し、Lehmann氏は、当初の目標であった売上高への約3ポイントの貢献と7,000万ユーロのEBITDA創出が達成できていると確認した。「計画通りに進んでいる」と述べ、アニマルヘルス事業は好調で、Planetary Health部門内での利益率向上も確認されているとした。