WeRide、海外ロボタクシーとL2+/L3 ADASの急伸で売上高が倍増 黒字化まで3年の道のり
2026年第2四半期決算説明会、2026年8月12日
WeRideが発表した第2四半期決算は、トニー・ハンCEOが「重要な変曲点」と評する内容となった。売上高は前年同期比でほぼ倍増し、前期比でも103%増の2億3,200万人民元に達した。この数字は、同社が試験的なロボタクシー導入段階から、特に海外市場を中心とした本格的な商用展開フェーズへと移行していることを裏付けている。一方で、収益化までの道のりは依然として数年先となる。ジェニファー・リーCFOは、2028年中に四半期ベースでのキャッシュフロー黒字化、2029年には通期での黒字化を目指す目標を改めて示した。このスケジュールは、今四半期の好調な業績を受けても前倒しされることはなかった。
L2+/L3 ADAS事業、設計採用から量産段階へ
今四半期で最も注目すべきデータは、同社が「WRD 3.0」と呼ぶL2+/L3 ADAS(先進運転支援システム)事業の加速だ。同セグメントの売上高は前年同期比で約2,600%増、前期比で219%増と急伸した。6月30日時点の累計車両納入台数は3万台を超えており、経営陣は年末までに10万台、2027年末までには累計50万台超を見込んでいる。これは、ADAS事業が単なる新規プロジェクトから、リーCFOが「当社の総売上高成長におけるますます重要なドライバー」と呼ぶ事業へと再評価されたことを意味する。
ハンCEOは、比較的少ない人員でこれを達成している理由について、WeRideの基盤モデル「Genesis」と「WIT」の存在を挙げた。「優れたAIインフラと基盤モデルにより、200〜300人のチームで中国、ひいては世界最高のADASソリューションを構築できる」と語った。また、ハードウェア効率についても特筆すべき点がある。WeRideの車載ドメインコントローラーは、競合他社が2,000 TOPSの演算能力を必要とするのに対し、約200 TOPSで動作する。それにもかかわらず、中国のインテリジェント・ドライビング・コンペティションで6連覇を達成しており、ハンCEOはこれを生の演算能力ではなく「モデル蒸留」による成果だと説明した。
ハンCEOが自ら言及したFSD(Full Self-Driving)との比較については、宣伝的な側面があるため投資家は慎重に受け止めるべきだが、注目に値する主張であることは間違いない。ハンCEOは、WeRideのADASシステムは中国の都市部シナリオにおいて「FSDと同等」であると述べ、広州市珠江新城CBDでの無介入運転の様子を2時間にわたりライブ配信した。同氏は、一線級の都市で自動運転企業の創業者がこのようなデモンストレーションを行うのは初だと強調した。
メルセデス・ベンツとのL3提携、OEMの調達戦略に疑問符
WeRideは今四半期、メルセデス・ベンツとのL3自動運転の概念実証(PoC)プログラムを発表した。経営陣はこれを世界トップクラスのOEMからの評価と位置づけている。しかし、これに対しLightShedのアナリストから最も厳しい質問が飛んだ。メルセデスはNVIDIAの主要パートナーであり、フルスタックの自動運転プログラムを運用していることから、NVIDIAのスタックでカバーしきれない何をWeRideが提供できるのかという問いだ。ハンCEOの回答は契約上の制限を理由に具体性を欠くもので、代わりに「DeepSeekが資金力のある競合他社を凌駕している」という例え話に終始した。このやり取りは、メルセデスとの関係が真のマルチソース化戦略を反映したものなのか、中国での規制上の必要性なのか、あるいは「評価」という言葉が示すよりも限定的な範囲のものなのかが不透明であり、投資家にとっては懸念材料となる。
海外ロボタクシーのユニットエコノミクスが鮮明に
海外売上高は前年同期比164%増、前期比約170%増となり、グループ売上高の約40%を占めるまでになった。経営陣は今回、これまで曖昧だったロボタクシーのユニットエコノミクスについて最も明確な開示を行った。ロボタクシー1台あたりの年間技術サービス収益は5万ドル(4万〜6万ドルのレンジ)と推計されており、各都市でのフリート密度が高まるにつれ上昇する見込みだ。ハンCEOは、WeRideが車両を所有したり運賃収入を直接得たりするのではなく、認可を受けた「バーチャルドライバー」モデルとして、現地パートナーから技術料やノウハウ料を徴収しているため、この数字は配車サービスの総運賃とは比較できないと強調した。
リーCFOによると、海外のロボタクシーフリートは今四半期で約400台に倍増した。しかし、ハンCEOが冒頭の挨拶で述べた、ロボタクシーを含むL4フリート合計が3,400台、そのうちロボタクシーが「1,800台超(前期比40%増)」という数字とは整合性が取れていない。この不一致が転記ミスなのか、国内と海外のフリート数の定義の違いによるものなのかは不明であり、経営陣によるさらなる説明が必要だ。
利益率の改善と営業レバレッジが顕在化、損失は継続
売上総利益率は過去最高の37.5%に達し、前年同期比で940ベーシスポイント(bp)上昇した。これは、利益率の高い海外L4およびL2+/L3事業へのミックスシフトが要因だ。総営業費用は前年同期比9.2%増の5億3,300万人民元にとどまり、売上高の成長を大きく下回った。リーCFOはこれを営業レバレッジが効き始めている証拠と指摘した。研究開発費は「Genesis」および「WIT」への継続投資により36%増の4億3,400万人民元となった一方、一般管理費は株式報酬費用の減少により低下した。
こうした改善にもかかわらず、純損失は前年同期比1%減の4億100万人民元、EBITDA損失は8.1%減の3億3,500万人民元にとどまった。6月30日時点で54億人民元の現金および流動資産を保有しており、資金繰りに余裕はあるものの、劇的なトップラインの成長と比較して損失の縮小ペースは緩やかだ。2028〜2029年のキャッシュフロー目標達成には、単なる四半期の勢いだけでなく、持続的な実行力が求められる。
基盤モデル「WIT」が中核技術の堀に
経営陣は今四半期に発表した「WIT」モデル(哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインに由来)の説明に多くの時間を割いた。ハンCEOは、これをビデオデータを「最小事実単位(minimal fact units)」へ分解するツールだと説明した。路上映像から抽出された原子的な因果事実が「Genesis」ワールドモデルに供給され、合成されたロングテールの運転シナリオが生成される。「デジタルAIにおけるハルシネーション(幻覚)は娯楽かもしれないが、物理AIでは致命的だ」とハンCEOは述べ、生成AIの許容誤差と、自動運転車に求められる安全性へのゼロトレランス(不寛容)を区別した。さらに、少なくとも100台の無人車両を6カ月間、重大事故なしで運用した実績がなければ「ロボタクシー企業」を名乗るべきではないと主張。これは、実績を伴わずにロボタクシーへの参入を公言するOEMやADASプレイヤーに対する牽制となった。