ソニー、第1四半期は過去最高益 関税還付と半導体の回復が熊本の地震被害を相殺 PS5ディスク生産は2028年に終了へ
2026年度第1四半期決算説明会(2026年7月31日)
ソニーグループは第1四半期決算説明会において、今後18カ月間でゲーム、イメージング、半導体の各事業を再編する戦略的決定を複数発表した。同社の第1四半期の売上高は前年同期比8%増の2兆8,378億円、営業利益は同40%増の4,765億円となり、いずれも第1四半期として過去最高を記録した。十時裕樹副社長兼CFOは、通期の営業利益見通しを8%引き上げ1兆7,200億円とすることを明らかにした。ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)、音楽、イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)の各セグメントがいずれも第1四半期として過去最高益を達成した。
PS5のディスク生産、2028年1月に終了
最も重要な発表は、ソニーが2028年1月をもってPlayStation 5のゲームディスクの製造を終了するというものだった。この決定に対し、すでに消費者団体から公的な批判や訴訟の動きが出ている。経営陣は、感情的な反発を認識しつつも、決定の背景について率直に語った。「ゲームは多くの人に愛されている。人々の思い出と結びついたエンターテインメントである」と幹部は述べ、コミュニティの懸念を理解しつつも、コンテンツのデジタル化は利益追求のためではなく、不可逆的な業界全体の潮流であるとの見解を示した。ソニーは、すでにコンテンツの多くがデジタル化されている現状を踏まえ、ディスクレス(ディスク非対応)への移行による短期的な事業への悪影響や売上への打撃は想定していないとした。また、PCゲームとの差別化については、物理ディスクこそが競合に対する「堀」ではないと主張。「厳選されたコンテンツと安定したゲーム環境こそが当社の強み」であり、PS5はハイエンドのゲーミングPCよりも手頃な価格で提供できると強調した。コード・イン・ボックス(箱入りコード)形式が普及している北米をはじめ、各地域の販売パートナーと協議を進め、移行を管理していく方針だ。
タムロンへのTOB、イメージング事業の野心示す
ソニーは、精密レンズメーカーのタムロンを完全子会社化する提案を行ったことを認めた。これは「感動」というミッションを支える技術と創造性への投資という、長年の戦略に沿ったものだと説明した。経営陣は、両社の強みを融合させることでイメージング事業の発展を加速させるとともに、タムロンの企業価値向上を目指すと述べたが、買収の詳細については言及を避けた。この動きは、ソニーがこれまでIP(知的財産)重視だったM&A戦略を、ハードウェアや光学分野へと広げる意欲があることを示唆しており、資本配分の観点からアナリストが注視すべき変化といえる。
TSMCとの画像センサー合弁、締結へ前進
ソニーは、次世代画像センサーの共同開発・製造に向けたTSMCとの戦略的パートナーシップに関連し、今期すでに約100億円の準備費用を計上したことを明らかにした。最終合意に向けた議論は「順調に進んでいる」とし、下半期には具体的な拠点準備作業を開始する見通しだ。合弁会社が正式に設立されれば、投資額は現行水準から増加する可能性がある。同社は、これを画像センサー分野での圧倒的な地位を守るための核心的な取り組みと位置づけており、モバイル用途にとどまらず、I&SSセグメントの長期的な成長ベクトルとして期待される物理AIアプリケーションへの展開を目指す。
熊本の地震被害、10年の耐震投資で最小限に
7月28日に発生した熊本での地震により、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの熊本テクノロジーセンターは一時操業を停止した。しかし経営陣は、約3カ月を要した2016年の地震時と比べ、復旧ははるかに速いと語った。今回は8月4日から段階的に生産を再開し、8月中旬までには震災前の水準に戻る見込みだ。幹部は、この早期復旧の要因として、過去10年間にわたる建物や設備の耐震補強投資、前回の災害の教訓、そしてパートナー企業や従業員との緊密な連携を挙げた。朝日新聞の質問に対し、幹部は「10年前とは被害のレベルが全く違う」と述べ、菊陽町の揺れが前回より小さかったことに加え、同社の耐震投資が被害軽減に寄与したことを確認した。現時点では不確実性が残るため、通期業績予想への影響は織り込んでいないが、半導体事業の年間業績に重大な影響が出ることは想定していないとした。
業績予想の上方修正、関税還付が牽引
ソニーは今期、米国での関税還付により約800億円の受領を見込んでいる。経営陣は、その約70%が第1四半期にすでに計上済みであり、大半がゲームセグメント、残りがI&SSセグメントに割り当てられたことを確認した。アナリストからは、1,200億円の営業利益見通しの上方修正のうち、どれだけが関税還付によるもので、どれだけが本業の改善によるものかという質問が相次いだ。同社は、上方修正の大部分は関税還付と為替の追い風によるものであり、事業トレンドの根本的な変化ではないと明言した。「まだ第1四半期、わずか3カ月が終わったに過ぎない」と幹部は慎重な姿勢を見せつつも、コンテンツと半導体事業には5月時点の当初予想比で上振れの余地があると指摘した。
メモリコストの高騰、下半期に重荷
メモリ価格のインフレは、ゲームハードと半導体事業の両面で継続的な逆風となっている。ソニーは、今年のPS5の販売目標達成に必要なメモリはすでに確保しており、ハードウェアの収益性は前年度並みを維持できるとした。一方で、メモリコストの上昇が、モバイルセンサーの最大の顧客層であるハイエンドスマートフォンの下半期の出荷台数に影響を与える可能性があると警鐘を鳴らした。経営陣は、商用製品全般に対する需要への影響を約10%と試算しており、市場の不確実性が続いていることから、第3・第4四半期の見通しは第1四半期よりも保守的に策定していると述べた。モバイルセンサーの通期売上高は、顧客や製品構成の改善による平均販売価格の上昇にもかかわらず、前年度比でわずかに減少する見通しだ。
音楽カタログ価値、AIライセンスとZ世代の再発見で向上
音楽セグメントの第1四半期営業利益は前年同期比14%増の1,059億円と過去最高を記録した。注目すべきデータとして、ソニー・ミュージックグループが共同保有するマイケル・ジャクソンの楽曲カタログが、伝記映画『Michael』の公開後、ストリーミング再生数が公開前の約4倍に急増したことが挙げられた。経営陣は、この成長の多くを、同カタログを初めて発見したZ世代のリスナーによるものと分析している。ソニーはこれを、カタログ価値が持続的に積み上がる証左とし、「AIによって可能になる新たな、より大きなライセンス機会により、今後さらなる価値向上が期待できる」と断言した。資金調達面では、みずほ証券の中根康夫氏が、GICと共同で行ったRecognition Music Group買収のバランスシートへの影響について質問した。経営陣は、現金、有利子負債、そしてGICのファンド構造を組み合わせた「クリエイティブなソリューション」であると説明。質の高い音楽カタログは希少であり、単一の静的な構造に資金を固定するのではなく、資産が利用可能になった際に迅速に動けるよう、資金調達の柔軟性を確保したいと語った。