Workday:AI関連のARRが6億ドルに接近 2028年度の慎重な成長目標を提示、PEによる買収観測には言及避ける
2027年度第2四半期決算説明会(2026年8月27日開催)
Workdayが発表した2027年度第2四半期決算は、人工知能(AI)が単なる話題から、依然として初期段階とはいえ、実質的な収益源へと移行したことを裏付けた。一方で経営陣は、2028年度の成長目標を予備的に示し、市場の期待に沿った水準に留めることで過度な期待を抑制した。投資家にとってより大きな関心事となったのは、同社が回答を拒んだ点だろう。CEOのAneel Bhusri氏は、Wells FargoのMichael Turrin氏から直接投げかけられたプライベート・エクイティ(PE)による買収観測について、「後者についてはコメントできない」と述べるに留めた。
AI収益は現実のものに、ただし収益化は普及に遅れ
製品・技術担当プレジデントのGerrit Kazmaier氏によると、WorkdayのAI製品に関連する年間経常収益(ARR)は現在6億ドル近くに達しており、前年同期比で200%以上、前期比でも20%以上の伸びを記録した。AI製品は当四半期に1億ドル以上の新規年間契約額(ACV)を創出し、全新規ACVの25%超を占めた。WorkdayのAIエージェントを少なくとも1つ利用している顧客は5,500社を超え、前期比で35%増加した。
しかし経営陣は、利用状況が課金に先行している現状を率直に認めた。CFOのZane Rowe氏とBhusri氏は、従量課金モデルである「Flex Credits」への移行により、導入と収益認識の間にタイムラグが生じていると指摘した。Flex Creditsの契約顧客は約200社にとどまり、エージェントを導入している5,500社との乖離がある。Bhusri氏は「初期の兆候は素晴らしいが、来年度に向けて慎重な楽観論をとっている理由の一つは、サブスクリプションと従量課金のハイブリッドモデルへ積極的に移行しているためだ」と述べた。Evercore ISIのKirk Materne氏は、cRPO(契約済み残存履行義務)の成長率が14.2%と従来予想の範囲内に留まったことを引き合いに、AIへの熱狂が中核事業の受注から焦点を奪っていないかと追及した。これに対し、プレジデント兼最高商務責任者のRob Enslin氏は、現在は意図的に「導入優先」のフェーズにあり、エージェントが広範な利用を通じて「強固」になるにつれて収益化が追随すると反論した。
2028年度の予備的ガイダンス:堅実な成長と利益率改善
Workdayは10月13日にラスベガスで開催する金融アナリスト向けイベントに先立ち、2028年度の予備的見通しを公表した。サブスクリプション売上高の成長率は、2027年度下半期の予想ペースと一致する約11%を見込んでいる。非GAAPベースの営業利益率は、2027年度のガイダンスである31%(従来予想から上方修正済み)から、来年度は少なくとも2ポイント改善する見通しだ。IR担当バイスプレジデントのJustin Furby氏は、「Sana Enterprise」、「Workday Extend」、「Data Cloud」、およびAIエージェントポートフォリオ全体からのアップサイドは現時点の予想には織り込まれておらず、2028年度の数値は上限ではなく保守的なベースラインであると明言した。
第2四半期のサブスクリプション売上高は前年同期比14%増の24億7,100万ドル、総売上高は13%増の26億4,900万ドルとなった。2027年度通期のサブスクリプション売上高ガイダンスは99億4,000万ドル〜99億5,000万ドル(成長率13%相当)に設定された。総収益維持率は97%を維持し、既存顧客からの純拡大がサブスクリプション売上高成長の約60%を牽引した。サブスクリプションの総バックログは前年同期比8%増にとどまり、減速した。Rowe氏は、新規顧客獲得よりも既存顧客ベースでの受注にミックスがシフトしたことが要因だと説明した。
「Sana Enterprise」がWorkdayの新たなフロントドアに
最も具体的な製品ニュースは、10月に開催される「Rising」カンファレンスまでに、Sanaの対話型インターフェースをWorkday全体のデフォルトのホーム画面にする計画だ。Bhusri氏が人事、財務、ITを網羅する「AIワークベンチ」と表現するSana Enterpriseは、当四半期に23の新機能を追加した。これには、ユーザーが自然言語を使ってエージェントを作成できる「Sana Agent Builder」が含まれる。Workdayは8月4日に自社の従業員向けにSana Enterpriseを展開し、3週間で1万2,000人のアクティブユーザーが2万2,000件のカスタムエージェントを作成した。当四半期の新規顧客にはAstraZeneca、Novartis、Caterpillar、Delivery Hero Groupなどが名を連ね、「Workday Learning」と「Sana Learn」の統合製品は月間アクティブユーザー数が前年同期比で約190%増加し、公開されているコースの78%がAI生成となった。
「Decision Intelligence」が財務領域で早期の牽引力を発揮
エージェント型の分析・計画ツール「Adaptive Decision Intelligence」は、わずか4ヶ月の開発期間を経て7月31日に一般提供を開始した。Kazmaier氏は、同社史上最速レベルのコンセプトから製品化への道のりだったと振り返る。すでに170社の有料顧客を獲得している。Kazmaier氏は、汎用的な大規模言語モデル(LLM)ツールとの違いを率直に語った。「フロンティアモデルはデータの分析には長けているが、オペレーショナルシステムの周辺に留まっている。ビジネスのセマンティクス(意味論)から切り離され、ダウンロードしたスプレッドシートを基に作業しており、実際の業務プロセスにフィードバックを返すことができない」。ある顧客はWorkdayに対し、同製品によって「財務チームが自信を持って説明できる回答が得られるようになった」と語ったという。次のフェーズでは、同ツールを仕訳データ、計画データ、「Accounting Center」に直接接続し、今後はワークフォース分析との統合も予定されている。
展開・導入エージェントが早期のオペレーティング・レバレッジを証明
「Deployment Agent」は現在4,600社以上の顧客と2万4,000人近いユーザーを抱え、当四半期のクエリ数は約500%増加した。経営陣は長期目標として、導入作業時間を80%〜90%削減することを目指している。決算発表のわずか1週間前に一般提供を開始した「Adoption Agent」は、最初の3日間で200社以上が導入し、2万件のリリースノートを評価、顧客満足度は94%を記録した。SolutionHealth社は同ツールを利用してリリース時間を70%短縮したと報告されている。こうした効率化の恩恵は、中堅企業向け製品「Workday Go」にも波及しており、顧客数は第1四半期比で5倍以上に増加した。
オープン・プラットフォーム戦略と競争優位の論理
最高技術責任者(CTO)のGabe Monroy氏は、顧客がどのAIスタックを選択してもWorkdayが選ばれる理由として、アーキテクチャ上の優位性を説いた。Snowflake、AWS、Googleなどのパートナーに対して「ゼロコピー」でのデータアクセスを提供する新しいData Cloudの提供や、MCPプロトコルを介した新しいエージェントAPIの提供を挙げた。当四半期には6件のData Cloud契約が成立し、すべてプレミアムな「Pro Edition」での契約となった。一般提供は第3四半期に予定されている。Monroy氏は「合法的(lawful)」なエージェントと「無法(lawless)」なエージェントを明確に区別し、既存の権限やポリシーの枠組みの中で厳格に動作するエージェントこそがWorkdayの強みだと主張した。「無法なエージェントは独断で行動しようとするが、合法的なエージェントはシステムが許可した範囲でのみ行動する」。Bhusri氏は、従来のERPやHCMベンダーに対する競争上の優位性を補強し、競合他社は通常6〜7種類の異なる製品バージョンを運用しており、AIを駆動するための統一されたデータモデルを構築することが構造的に困難であると指摘した。
資本還元とガイダンスの詳細
Workdayは50億ドルの自社株買いプログラムを予定より6ヶ月早く完了し、当四半期に13億ドルを買い戻した。取締役会は新たに40億ドルの自社株買い枠を承認した。同社は第2四半期末時点で34億ドルの現金および有価証券を保有し、従業員数は2万896名となった。第3四半期の見通しについては、サブスクリプション売上高を約25億1,500万ドル(12%増)、cRPOの成長率を11%〜12%と予測した。成長の減速は、昨年の比較対象に1ポイント以上の寄与があったParadox買収の影響がなくなることなどが理由である。通期の営業キャッシュフローガイダンスは34億5,000万ドル、フリーキャッシュフローガイダンスは前年比15%増の31億8,000万ドルで据え置かれた。